自分のスマートフォンでSkype(スカイプ)やEvernote(エバーノート)、DropBox(ドロップボックス)といったアプリを使っている人は多い。複数の人と会議通話やチャットをしたり、ネットでチェックした情報を蓄積したり、複数のコンピュータでデータを共有したりするのに、とても便利だ。
すきま時間を上手に使うことで、仕事の効率化にもつながる。せっかくなら職場のパソコンとも連動させてパフォーマンスをさらに上げたいところだが、社員が勝手にアプリをインストールできない会社もある。友人S子の職場がそうだ。
「この間、会社のパソコンでエバーノート使ってたら、システム担当に怒られちゃってさ。なんでダメなんですかって聞いたら、『勝手なことするな。もしやるなら申請してからやれ』って。面倒だから削除したけど、通勤途中にメモしたこととか見れなくなってガッカリ。なんか内向きで時代遅れなのよね、うちの会社」
「事故」と「渋滞」を防ぐために担当者が監視
他の人に聞いても、同じような会社はよくあるようだ。オーストラリアでの調査によると、社員による独自アプリの導入を認める会社は28%ほどだという。これは日本の会社よりも多いのか少ないのか。
そもそも、アプリ導入を禁止している会社には、どんな理由があるのだろうか。大手通信系の会社に勤める男性Uさんに話を聞いてみた。
Uさんによると「色々な理由があるけれど、セキュリティ面が一番大きい」とのこと。変なアプリをインストールすることで、社内ネットワークにウイルスが侵入してくることを懸念しているのだ。
「ウイルスが侵入して顧客情報や機密情報が流出すると、損失が莫大になるおそれがあるし、顧客や取引先からのイメージダウンにもなる。コンプライアンスの観点からも予防策が求められるので、リスクを元から断つために怪しいアプリを使えないようにしているんだよ」
もうひとつの理由は、想定外の通信で社内ネットワークに負荷がかかると、通常業務に支障が出るからだ。「渋滞」をできるだけ起こしたくないということだろう。大事なところにリソースが不足する事態は、企業として避けたい。
これを徹底するために、ネットワークを監視して違反者に注意したり、サイト閲覧のURLの条件を設定することもある。ツイッターやフェイスブックすら使えない会社もあるそうだ。
「生産性が大事」と使用を許す会社もある
「事故を起こさないこと」と「渋滞を起こさないこと」。こんな理由ならS子も納得するかと思い報告すると、彼女はまるで分かっていないという顔でかぶりを振った。
「じゃあ、N君のところは、なぜ許可してると思う?リスクがゼロじゃなくても、仕事の生産性の方が大事だからよ。実際、N君は『スカイプなんか、セキュリティもネットワークの負荷も問題ないに決まっている。技術に詳しくないやつほど騒ぐんだ』と言っているわ」
ウェブ制作会社を経営するN君の会社では、使いたいアプリがあると管理者に要望を出し、審査に合格すると「○○アプリの使用を許可します」と全社員に連絡が来るという。要望を出さなくても、使えるアプリのリストが更新されることも。個別に申請して許可を取るS子の職場とは似て非なる手続きだ。
まあ、N君の会社は小さなベンチャーで、Uさんのところみたいな大きな会社とは警戒の度合いも違うのだろうけど。あと、クラウドサービスだとデータが消えちゃうリスクもあったりするし。
それでも、S子は納得しない。「ゼロリスクなんて言ってたら仕事にならない。これじゃ『管理栄えて、現場しぼむ』だわ。こういう不満がもとで、有能な人からフリーになっていくんだから」と睨みつけられてしまった。おー怖い怖い…。(池田園子)