「このお客さま、すっごく怒ってるんです! 何とかして下さい!!」
今日もコールセンターの片隅で、オペレーターさんが手を振り上げました。たまたま近くにいた私が席まで走っていくと、勢いよくヘッドセットを手渡されました。
オペレーターではどうしようもなくなったお客さまは、私たち社員が対応することになっています。つまり問答無用で電話を代われ、ということです。私は内心(うぅ、いやだなぁ…)と思いつつ、腹をくくって電話機の保留を解除しました。
クレームを起こしやすい要注意人物が存在する
「オイ!! なんなんだ、さっきのオペレーターの態度は!! お前らはどういう教育をしているんだ!!」
「も、申し訳ございませんー!!」
案の定、お客さまは電話を取った瞬間に怒りで爆発しています。私は必死で謝り、汗だくになりながらなんとかお客さまの怒りを収めました。
数十分後、汗でびしょびしょになりながら電話を終えると、隣で私にヘッドセットを押しつけたオペレーターさんが、電話の終わるのを待っていました。「えっと…、どうしてクレームになってしまったんですか?」と尋ねると、
「わかんないです! お客さまが急に怒りだしたんですよ!!」
こちらはこちらで怒り心頭といった様子。クレームになった経緯を記録するために、今度はこちらのお話を聞かなければなりません。私はちょっとだけ泣きたくなりました…。
残念ながらコールセンターには、「クレームを起こしやすい」オペレーターさんがいます。なぜか毎回お客さまを怒らせてしまう、要注意人物が。
こういった人には、なるべく気を配る必要があります。クレームが起きたら大ごとになる前に、できるだけ早く電話を代わって対応しなければならないからです。
そうして問題のあるオペレーターさんを日々さりげなく観察していると、ひとつ気がついた事がありました。クレームを起こしやすいオペレーターさんはみんな、なぜか足元が落ち着いていないのです。
人の本心は「足」の動きに表れてしまう
「問題オペレーター」は、お客さまの電話を受けるとき、足を組んだり靴を脱いだり、サンダルをひっかけて足をぶらぶらさせています。そういった足の動きは、オペレーターブースを後ろから見ていると、とてもよくわかります。逆に、お客さまの対応がとても上手な優秀なオペレーターは、必ず足を揃えて交渉をしているのです。
動物行動学者のデズモンド・モリスは、著書『マンウォッチング』の中で「動作の信頼尺度」について説明しています。人の本心が表れやすいのは、汗をかいたり顔を青ざめさせたりする「自律神経」の動きと、顔から一番遠い「足」の動きなのだとか。お客さまに対する不誠実な態度は、知らず知らずに足元に現れてしまうのかもしれません。
「もしかして、これって使えるかも…」
今まで特に注意を払ってはいませんでしたが、この「法則」に気がついてから、自分でも交渉する時に意識して足を揃えるようにしてみました。するとびっくり、足を揃えると下腹部に力が入り、今までよりハキハキした声が出ます。声の通りもよくなって、お客さまから怒られる事が少なくなってきたのです。
今では、足を組んだり靴を脱いだりしているオペレーターさんを見つけると、なるべく注意するようにしています。オペレーターさんだって、好きでお客さまを怒らせたいわけではないはず。少しの工夫でクレームは減らせるのです。
「最近電話でクレーム起こすことが多いかも…」。そんな風に思ったら、ぜひ足を揃えて電話をしてみて欲しいと思います。(N本=えぬもと)