「デパートでスラックス買おうと思ったらさ、なんか探しにくくて困ったよ…」
40代のAさんから、こんな愚痴を聞いた。いつも行っている量販店ではスラックスがサイズごとに並んでいるのに、デパートでは色や形ごとに並んでいたのだという。
いくら外見が気に入っても、自分の履けるスラックスはサイズで決まるはず。なのにデパートでは、グレーはグレー、紺は紺のスラックスがまとまって並んでいるので、それぞれの固まりから自分の履けるものを探し出さなければならない。
サイズよりデザインを優先するデパート
いつもスーツを着ている30代男性のBさんに聞いてみると、「うちの近所の大型ショッピングセンターIでも、色や形ごとに並んでるよ」という情報をもらった。
「確かに量販店より、チェックする範囲は広くなるよね。僕は標準より痩せてるから、黒のスラックスが気に入っても『サイズないじゃん!』ということがよくある。空振りが多いんだよ(笑)」
Bさんみたいに痩せている人だけでなく、ウエストが太めのAさんも同じような「空振り」にウンザリしているに違いない。
では、なぜデパートやショッピングセンターは、サイズで並んでいないのだろうか。百貨店の紳士服売り場にいる知人に聞いてみると、
「サイズで並べちゃうと見た目が良くないし、ウインドウショッピングにならないからでしょ?」
別の老舗デパートの関係者は「デパートのお客さまは、全体的なコーディネートで買う方が多いからではないでしょうか。有名ブランドのお店で、スラックスだけがサイズごとにたくさん並んでいるのは考えにくいです」と言う。デパートでは、ブランドやデザインのイメージが大事なのだ。
一方、ある山手線駅前の紳士服量販店に寄ってみると、やっぱりスラックスはサイズごとに並んでいた。ウエスト76センチの人はそのコーナーに直行して、気に入った色や形を選べばいいし、モノがなければ退却だ。買うものが決まっている人には非常に話が早い。
量販店でも女性モノは見せ方を変えていた
筆者がウロウロしていると、お店の女性が声をかけてくれた。
「うちのお店には『今日は○○を買い足しに来た』と明確な目的をもって来店されるお客さまがほとんどですからね。スーツやスラックスは細かいサイズで分けて、それごとに並べているんです」
こっちの方がずっと便利だと思うが、量販店でも「女性モノでは男性とは見せ方を変えているコーナーもある」という。全部同じではないのか…。結局、デパートと量販店では、客層やコンセプトが違うのでディスプレイも異なることがよく分かった。
Aさんにそのことを報告したが、まだボヤきたいことがあるようだ。
「テナントなら分かるけどさ、デパートの平場や大型ショッピングセンターは、イメージより機能性を優先すべきだと思うけどねえ…」
Bさんは「大型ショッピングセンターは仕入先が多いから、仕入先ごとに種類でまとめた方が在庫管理が効率的なんじゃないの?」とうがった見方をしていたが、もしそうだとしたらお客にとっては、単に買いにくいだけなのではないだろうか。(池田園子)