2011年末には支店長による横領も発覚
Aの場合、最初の数年間で発覚していれば、顧客の被害は最小限に食い止められ、銀行としても元行員を刑事告訴するという苦渋の決断を迫られることはなかっただろう。
ではなぜ、長い間発見できなかったのだろうか。この手の典型的な不正に対しては、各金融機関ではそのリスクを十分に想定し、対策を強化しているはずである。
「行員同士のアットホームな雰囲気があだとなった」
謝罪会見において頭取は、原因についてそう釈明したそうである。Aは「わが家にいる感覚で」公私のけじめをなくしてしまったということか。
和気あいあいとした職場は、確かに居心地がいいだろう。しかし、馴れ合いやチェックの甘さを招き、規律が乱れやすい。顧客の大切な資産を預かる銀行の管理態勢は、アットホームであってはならない。
残念ながら同行では、2011年末にも支店長による横領が発覚しており、職員による横領は2001年以降今回で5件目となるそうだ。リリースは「全役職員一丸となって信頼回復に取り組んでまいります」と締めくくられている。今度こそ、その本気度が問われる。(甘粕潔)