音楽CDが売れないと言われて久しいですが、実は最近、密かに売り上げを盛り返していることをご存じですか? 2012年7月13日の日経新聞に「息吹き返すCD販売」と題したこんな記事がありました。
「日本のCDシングル出荷数は2002年から09年にかけてほぼ半分の341億円まで落ち込んだ。ところが10年に9%増とプラスに転じると、11年には16%増の432億円まで回復。世界全体の音楽ソフト販売がこの5年で半減したのとは対照的な動きだ」
昔からあった「みかん箱営業」が見直されている
その理由は、AKB48の「握手券」などの特典付CDに端を発した「店頭イベント」誘致型のCD販売にあるとのこと。
AKBばかりでなく、売り出したばかりの若手アーティストでも「店でイベントを開催すると、その歌手のCDなどの売り上げが普段の数百倍に膨らむ場合もある」(大手CD販売店社長)そうで、今やCD販売チェーン各店はイベント対策で増床競争になっている、というトレンドも紹介されていました。
「なんだAKB商法のおかげか」と思うかもしれませんが、こういった店頭イベント型拡販は、実は新しい手法ではありません。40代以上の人はご記憶かもしれませんが、昭和の昔のレコード販売の時代には、どんな歌手でも経験した拡販戦術だったのです。
歌手が街のレコード店をくまなく回り、店頭でマイクを握ってレコードを「実演販売」するアレです。ちなみにこのやり方、業界的には「営業」と呼ばれていました(みかん箱の上に立って歌う姿から、別称「みかん箱営業」とも言います)。
この「みかん箱営業」はレコード、カセットテープ時代の終わりとともに、デジタルの時代にリアル店舗回りなんて時代遅れとばかりに急激にすたれてしまい、低価格や手軽さを追求したネット配信全盛時代へと移行します。
ところが、「会いにいけるアイドル」というコンセプトで送り出されたAKB48の大ブレイクとともに、古き時代の「みかん箱営業」の有効性に急にスポットが当てられました。
言ってみれば、AKB48が音楽ソフト販売における「営業」の復権を後押ししたというわけです。言い方を変えれば、ネット営業全盛の時代にも「リアル営業」が有効であることを、音楽ソフト販売の世界が証明してくれたとも言えるのです。