労働契約法の改正案が2012年7月24日、衆議院で可決された。有期雇用で働く人たちから「雇い止めへの不安」や「処遇に対する不満」が指摘されていたことから、これを解決するための対処が必要とされたという。
しかし、労働者を守ることを目的とした規制強化をしても、かえって労働者に都合の悪い状況を招くのではという懸念がある。改正で、どのようなことが起こりうるのだろうか。
「安定雇用」は結果的に守られなくなるおそれ
今回の改正ポイントは3つ。1つめは「有期雇用」を「無期雇用」に転換するための改正である。有期雇用が5年を超えて繰り返し更新された場合、労働者の申込みにより無期雇用にすることが義務づけられる。
2つめは「雇止め」を規制する改正である。有期雇用を繰り返し更新し、実質的に無期雇用と変わらない労働者などは、合理的な理由がない限り、雇止め(雇用期間の満了に伴う雇用契約の終了)ができないことを法律に定める。
3つめは、期間の定めがあることによる「不合理な労働条件」の禁止である。有期雇用の労働条件が、無期雇用の正社員などと異なる場合には、職務の内容や配置転換の範囲などを考慮して不合理なものであってはならないとする。
このうち、素直に納得できるのは3つめのポイントだ。同じ仕事をしているのに、正社員という「身分」を得た人だけが給料が高いというのはおかしい。「正社員は新卒で苦労して入ったんだから」などという理由は通じなくなる。不公平が是正されることに期待したい。
一方で「無期雇用への転換」や「雇止めの法定化」は、果たして思惑通りに進むのか。改正法の施行前に締結された有期雇用には、無期雇用への転換は適用されない。これから新しく雇用契約を締結する企業は、5年を超えないように期間を調整するだろう。
これにより、今後4年半で契約を切られてしまったり、これまでと同じ仕事に就けなくなったりする人が増えることが予想される。安定雇用を促すつもりの改正が、結果的に逆に働いてしまうのである。