臨床心理士・尾崎健一の視点
管理職には「気づくこと」と「よく聴くこと」が大事
この支店長の姿勢には、多くの管理職が見習うべきところがあります。部下のメンタルヘルスに対する管理職の役割は、「気づくこと」と「よく聴くこと」「専門家につなげること」の3つです。部下の様子がおかしいのに気づき、声をかけるところは、上司として素晴らしいと思います。変化に気づくためには、部下のいつもの様子を知っていなければ気がつきません。日頃からきちんと観察していたのでしょう。
一方、「よく聴くこと」はどうでしょう。チェックリストに当てはまるかどうか、病気かどうかに目が行き過ぎるあまり、部下本人の気持ちや疲れの原因について耳を傾けることがおそろかになっていないでしょうか。部下が「勝手に辞めろなんて」と憤るのは、「よく聴いてもらえた」という感覚が不十分なことの現れです。「専門家につなぐこと」は、緊急性がない場合には本人の同意が必要ですし、強要するのも考えものです。いずれにしても「よく聴くこと」で、本人の希望が読み取れたり、必要な対応への同意も得やすいものです。
(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。