老舗デパートの外商マンは、いかにして販売成績を水増ししたのか

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本当に「全く予見できない」行為だったのか

   調査委員会は、上司の管理・監督責任を認めつつも、

「本件事案は、お得意様営業部に関する通常の業務監査では全く予見できない、元従業員による極めて特異な個人的犯罪行為であった」

としている。

   しかしAの不正は、内部統制の「いろは」であるチェックを行っていれば、すぐに見抜けたはずである。売上代金受入票の「顧客名」と「決済口座番号」の照合や、「売上明細」と「決済記録」の照合、請求書直送停止という「異例取引」の注視などは確実にしていたのか。「極めて特異な」「全く予見できない」犯罪といえるのかどうか。

   Aは、集金した現金や顧客の預金の「私的な着服」は強く否定しているそうだが、もちろんそれは何の言い訳にもならない。売上実績を水増しして、給料やボーナスを不正に得ていたのであれば、着服したのと同じだ。

   さらに、調査委員会が指摘するとおり、Aは老舗百貨店が歴史とともに培った信用を大きく傷つけた。損害を被った顧客には会社が返金をしており、今後はAが会社に損害賠償をすることになる。しかし、失った信用はそう簡単には取り戻せない。(甘粕潔)

甘粕潔(あまかす・きよし)
1965年生まれ。公認不正検査士(CFE)。地方銀行、リスク管理支援会社勤務を経て現職。企業倫理・不祥事防止に関する研修講師、コンプライアンス態勢強化支援等に従事。企業の社外監査役、コンプライアンス委員、大学院講師等も歴任。『よくわかる金融機関の不祥事件対策』(共著)、『企業不正対策ハンドブック-防止と発見』(共訳)ほか。
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