毎週水曜日にやっている井上真央主演のテレビドラマ「トッカン 特別国税徴収官」(日本テレビ)を面白く見ています。
主人公は、国税の徴収を担当している新人徴収官の女の子。金額や方法は違いますが、私が携わるカード会社の督促と同じ「お金の回収」の話なので、嫌われ仕事に悩む境遇や心情にはとても共感できます。
税金や家賃、ライフラインと戦ってお金を確保
でも、ドラマを見ていると「やっぱり税金って強いよなぁ」と思います。だって、カードの支払いを踏み倒しても逮捕されたりしないけど、税金を納めなかったら罪になるし、税金の徴収官たちは立ち入り調査や差し押さえという強力なカードを持っているのですから。
私が督促をするお客さまの中には、クレジットカードやキャッシングだけでなく、もろもろの支払いを滞納している方もいます。
お客さまの支払いの優先順位は、1番目が税金(天引きされることも多い)で、2番目が家賃(払わないと住めなくなるから)。3番目が電気、ガス、水道料金などのライフライン(止められると生活が困る)で、それらを払って最後にやっと、クレジットカードやキャッシングの支払いにまでお金を回して下さいます。
延滞中のお客さまに「そろそろお給料が出てるはず!」と電話をかけると、
「あ~、××カードさん?税金滞納してたら銀行口座押さえられちゃった。しばらく払えませんね~」
「給料は家賃に回しちゃった。住む所なくなると困るからさ」
なんて言われてしまうこともあります。
それに私たちが督促に使えるのは、電話をかけることと、「督促状」と呼ばれる手紙を送ることの2つだけ。この2つの手段で、差し押さえや立ち退きの勧告といった強力なカードを持つ税金や家賃の回収と戦っていかなければならないのです。
「しつこいわねぇ~」と言われても譲れない
昔、某消費者金融に勤めていた先輩はこんな対策をしていたそうです。
「支払い日を給料日の前にするんだよ。そうすればお客さまは期日に払えないから、毎月督促の電話をかけることができる。他の人たちは給料日の後に支払いを設定してるから、俺がお客さまに一番先に連絡取って、給料日に即入金してもらえる」
く、黒い!! 思わず恐れおののいてしまいました。しかし、お客さまにいち早く連絡を取って入金をしてもらわなければ、他のライバルたちによってお客さまの元からはあっという間に資金がなくなってしまいます。担保もなく回収の強制力もないからこそ、消費者金融は強引な督促をしなければならなかったのでしょう。
今ではコンプライアンスの問題で、これほど露骨な手段は使えませんが、スピードが回収の要になる点は変わっていません。お客さまに電話をかけると、
「××カードさんはしょっちゅう電話かけてきて、しつこいわねぇ~」
またまたこんなことを言われてしまうのですが、私たちにできるのは、とにかく早くお客さまに電話をかけて入金の約束をして、その約束が破られたらすぐに連絡してフォローすることだけ。
税金より早く、家賃や光熱費の督促よりも早く。強制的に差し押さえたり、電気、ガス、水道という生活に必要な物を盾に取れない私たちは、スピードしか他の回収のライバルに勝てる点がありません。
お客さまにしつこく連絡する事は大変心苦しく思うのですが、悲しいけど回収も、もう競争なのです…。(N本=えぬもと)