「○○さん御用達のお客様」には要注意
取締役部長という強力な権限を持つ者が、納入業者の幹部と示し合わせれば、不正リスクは格段に高まる。そんな上司の悪行を目の当たりにした課長は、「ならば自分も」と不正を正当化したのかもしれない。
スクラップの横流しは、この業界では「伝統的な」手口といえよう。親会社はリスクをどの程度認識し、チェックしていたのか。
「くず」と名がつくと管理が甘くなりがちであるが、流通市場で価値があるものは、会社にとって重要な資産であることを忘れてはならない。ましてやレアメタル、腐っても鯛である。
また、レアメタルの仕入価格が適正かどうかは、親会社には分かりにくく、内部監査等でも指摘できなかった可能性もある。
内部か外部かを問わず、共謀はお互いの馴れ合いや癒着から生じる。それを防ぐためには、人事を固定化せず、適切な頻度で異動や担当替えを徹底することが必要だ。「この人にしか分からない仕事」「○○さん御用達のお客様」には要注意だ。(甘粕潔)