Q&AサイトのOKWaveに、こんな相談が載っていました。質問者のselflessさんは、ネット上で見たあるマンガを見て、強いショックを受けました。
商品企画部で働く23歳のF君は、優秀な企画マンとして嘱望されています。ある日、遅くまで企画書を作っていると、U課長が声をかけてきました。そして企画をチェックし、「ここは具体的に数字があった方がいいな」などと助言した後、優しくこう言いました。
「優秀だが詰めが甘いぞ。よし、残りは俺がやっておこう」
「ろくに寝てないだろう。今日は帰って休みなさい」
あのジョブズも「他人の脳みそ」を盗んでたけど
F君は「こんないい上司に巡り会えて、僕は幸せ者だ!」と喜んだのも束の間、数日後に、その企画は「課長の企画」として推進が決定したことを知りました。手柄を横取りされてしまったのです。問い詰めるF君に、U課長はこう言い放ちます。
「部下の企画は上司の企画。部下の手柄は上司の手柄。常識だよ、君!」
質問者さんが思い出したのは、アップルのカリスマ創業者、故スティーブ・ジョブズのこと。部下から上がってきた提案を散々酷評した後、しばらく経つと、まるで自分が考えたかのように同じアイデアを話していた、というエピソードです。
部下たちからは「他人の脳みそを盗む『現実歪曲空間』」と呼ばれていたそうですが、質問者さんには、こんな卑怯なことをする人の感覚が信じられません。
「ジョブズに限らず、こういうことは結構あるのでしょうか? あるとすれば、部下はどうすれば防げるのでしょうか?」
しかし回答者からは、「上司に自分の成果を奪われる」と思うのは「勘違い」である、と指摘する意見が出されました。
「上司の命令の下で成果を出すのです。つまり何をしても100%上司の成果。自分(平社員)の取り分は始めから存在しない」(lumiheartさん)
「お前は何もしてないじゃん!」という人は少なくない
組織に所属する人にとって、仕事というものは「会社の指示命令に基づいてやっている」というのが基本的な考えです。そして、指示命令を下しているのは、目に見えない会社ではなく、目の前の上司です。
したがって、仕事の成果は自分のものではなく、会社のもの、すなわち上司のものということになるわけです。――確かにそれが原則ですが、だからといって部下の名前を伏せ、自分がやったように偽装するのは、どう考えてもフェアではありません。
回答者の-boya-さんも、「お前は何もしてないじゃん!」という人に「手柄を奪われた」ケースをいくつかあげています。
・自分の自主的な努力によって期待以上の成果が得られたはずなのに、課長が「私の指示でやらせました」と部長に報告した
・協力をお願いしても応じてくれなかった係長が、係の成果を「我々がやりました」と課長や部長に報告した
・成果をあげたのに、課長から「ここから先は私がやる。お前はこれ以上関わるな」と言われ、それまでの貢献がなかったことにされた
一方、itou2618さんは「日本の組織は個人よりチームを評価する傾向が多いですから、そういう優秀な上司のもとで鍛えられた方が出世できます」と慰めています。
もし本当に優秀なら、プレゼンの中で「なお、この企画は、うちの若手のホープF君のアイデアに基づいております」と堂々と明かしたほうが、上司としての株も上がる気がするのですが。「優秀」なのと「潔い」のは、また別なんでしょうかね。