休暇は社員だけのためならず 「職場離脱」で不正を発見せよ

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「なんでそんなに忙しくしているのか」と懐疑心を持て

   内部統制では、定期的な人事ローテーションや長期休暇取得の義務づけを重視しているが、それは、不正の隠ぺい継続を不可能にすることで、不正行為の抑止または早期発見を促す狙いがある。このような対応が最も徹底されているのは、金融機関であろう。

   銀行などでは「職場離脱」と称して、全役職員に毎年1週間以上の連続休暇を義務づけたり、指名研修を行ったりして、一定期間職場を離れさせる。そして本人が不在の間に、上司などが、本人が作成した書類をチェックしたり顧客と連絡を取ったりして、おかしな動きがないかどうかを確認するのだ。

   職場離脱のための研修については、その効果を高めるために、当日に抜き打ちで指名して受講させる金融機関もあるそうだ。研修期間中は携帯電話による顧客や職場との交信は禁止される。顧客の現金や預金を日々大量に扱い、信用を第一とする金融機関ならではの徹底ぶりといえる。

   企業の管理者は、休暇制度は社員のためだけでなく、企業の不正リスク管理のためにも不可欠だという認識を新たにして、休暇取得の徹底と取得中のチェックの強化を図らなければならない。

   休暇も取らずにがんばる部下がいたら、「仕事熱心で感心だ」と手放しでほめるのではなく、「なんでそんなに忙しくしているのか。もしかしたら何かを隠し続けようとしているのではないか」と考えることも必要かもしれない。そのような懐疑心が、不正リスクへの感度を高める。(甘粕潔)

甘粕潔(あまかす・きよし)
1965年生まれ。公認不正検査士(CFE)。地方銀行、リスク管理支援会社勤務を経て現職。企業倫理・不祥事防止に関する研修講師、コンプライアンス態勢強化支援等に従事。企業の社外監査役、コンプライアンス委員、大学院講師等も歴任。『よくわかる金融機関の不祥事件対策』(共著)、『企業不正対策ハンドブック-防止と発見』(共訳)ほか。
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