近視眼的な視点しかもたない経営者では、日本企業は復活しない

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   日本の中小企業には、世界の他の誰にも作れない製品を作る会社がたくさんある。たとえば「世界で最も完全に近い球体をつくれる」といったオンリーワンの技術を持つ会社だ。こういうモノづくりの素晴らしさは、細かい所をおろそかにせず、完璧を期する態度によるところが大きいと思う。

   このように細かい所に注意が向くのは、日本人の大きな特徴である。しかし、物事にはプラスの面があればマイナスの面もある。細かい所に特に注意がよく回る人は、大きな視野を見失ってしまう傾向をあわせ持つ場合か多い。近眼の人には遠くのものが見えにくい、ということだ。

優れた部品を作っても、下請けとして安く買いたたかれる

世界がどう動いているか、理解しようとしているのか
世界がどう動いているか、理解しようとしているのか

   大きな視野を持つことは非常に大事である。世界がどう動いているのかを十分理解しないと、判断を誤る可能性が高まる。自分の技術を磨くことばかりに注力して、世の中の全体像を把握することをおざなりにすると、全体の中での自分の立ち位置・役割を見失う。これが近視眼的な見方、あるいはガラパゴスの問題点である。

   逆に、世界には「細かい所をつめていくことは苦手だが、物事を大きくとらえるのは得意」という人々がいる。うまい言い回しが思いつかないが「遠視眼的」とでも呼べば良いだろうか。あるいは「大陸的」という表現も近いかもしれない。

   例えば軍事や外交で世界一の大国アメリカは、大局的観点から世界中の国との関係を常に考慮している。そうしないとアメリカ中心の世界秩序(パクス・アメリカーナ)を維持できないからだ。

   判断を誤って失敗することもあるが、それも必要なコストだという考えだろう。日本のように、外交と言えばアメリカと中国と朝鮮半島と、それにせいぜいロシアとうまくやっていければとりあえず良し、としがちの国とは大きな違いだ。

   大局観的存在の企業といえば、ボーイングあたりがその典型だろう。世界中の会社から部品を調達して、それを統合してジャンボ・ジェットを作る。それぞれの部品を作っている会社ももちろん大事だが、それらはボーイングにとってみれば所詮下請けに過ぎない。

   近視眼的視点しかもたない会社は、優れた部品を作ったとしても、ボーイングやアップルのような会社の下請けとなって安く買いたたかれてしまうことになる。でも、それはまだ良い方で、万が一消費者のニーズや技術の発達を見失ってしまい、自分の技術の有効活用ができなくなると、消え去る運命が待ち受けている。

小田切尚登
経済アナリスト。明治大学グローバル研究大学院兼任講師。バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバ等の外資系金融機関で株式アナリスト、投資銀行部門などを歴任した。近著に『欧米沈没』(マイナビ新書)
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