棒グラフを壁に貼っている会社は「ブラック営業」なのか

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「営業マンの実績最大化が管理職の役目」という所長

   この会社は経営者も含め、私が知る限り決してブラック会社ではありません。一人ひとりの営業マンも悪質な人間ではなく、件数を売ることだけをよしとされている環境で、素直に疑うことなく営業活動に精を出しているように見えます。

   しかし、顧客の視点から見れば、全体で行われていることは、まぎれもない「ブラック営業」。会社の都合だけを優先し、顧客の利益を平気でおろそかにします。この原因は「現場の管理職の評価基準」にあったのです。

   ちなみに、本社の人事部が作成した人事評価マニュアルでは、「実績」と「業務姿勢」を評価基準の2軸としていました。しかし問題の職場では、「実績」の高い者は、クレームやクーリングオフがいくら多くとも「業務姿勢」も良い評価がなされていました。

   一方、「実績」の低い者はおしなべて「業務姿勢」にも悪い評価がつけられていました。実質的には、マニュアルとは異なる“実績至上主義”が実践されていたのです。

   問題の多い職場の管理職に、「あなたの部下である営業担当者のミッションは何ですか?」と尋ねてみると、予想通りの答えが返ってきました。

「自社収益の増大に資するような、個別実績の最大化が担当者のミッションです」

   さらに営業所長からも、「営業担当者の実績を最大化させることがお前のミッションだ」と言われ、それを実現できるよう指導、管理していると明かしました。

   もちろん、この企業の経営理念には「顧客の繁栄を第一に考え」という文言が入っていますが、営業所長や管理職の認識の段階で「顧客」の存在がすっかり抜け落ちてしまっていたのです。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。執筆にあたり若手ビジネスマンを中心に仕事中の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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