6月29日に行われた「反原発デモ」には、10万人規模の参加者があったようです。夜10時までやっている喫茶店にいたら、9時頃になって続けて4人の客がありました。
まず入ってきたのが、会社員のAさん。勤め先が赤坂にあるということで、さっそくデモの話を始めます。
「いや、ものすごい人で。デモの参加者もそうなんだけど、野次馬と帰宅者とがごちゃ混ぜになって、ほとんどパニックですよ」
そんなことを言いながら、スマートフォンを取り出すと、撮ってきた動画を見せようとします。
目撃者たちがスマホで思い思いの動画を撮影
そこへBさんとCさん夫婦がやってきました。ツイッターやフェイスブックなどで話題になっているのを見て、どんなものかとデモの様子を見物に行ってきたのだとか。
「地下鉄の国会議事堂駅で降りようと思ったら、改札から先が動かないんだ。人いきれと蒸し暑さとで、途中で倒れちゃうかと思ったよ」
そう言って、ズボンのポケットからスマートフォンを取り出し、動画を選ぼうとしています。さらに、自由業のDさんがスマートフォンを片手に来て、「たまたま赤坂に仕事で居て、デモに巻き込まれちゃって…」と、席につくなり動画の再生ボタンを押しました。
Aさん、Bさん、Dさん、それぞれの動画がほぼ一斉に再生され、狭い店内にシュプレヒコールと人のざわめきが大音量で響き渡りました。
「うわっ!」。私を含め全員が驚き、3人も慌てて動画を停止します。
音量を調整し、今度は別々に撮ってきた動画のお披露目となりました。iPhoneが2台、アンドロイドが1台。どれも、驚くほどクリアに撮れています。
こうなると、構図や絵面といったセンスの善し悪しが、如実に問われてしまいます。その点では、Aさんはただ撮っただけに近く、Bさんは狙い過ぎ、Dさんは他人に見せることを想定し、なかなかセンス良く撮っていました。
「しかしこれ、現場に居たら絶対撮っちゃいますよね」
とAさんが声をかけると、Bさんは「俺らは撮りに行ったみたいなもんだしね」と応じました。