賛否両論が渦巻く楽天の「英語公用語化」。2012年7月からの完全移行を前に、三木谷浩史社長が東京・有楽町の日本外国特派員協会で会見に臨んだ。会見は同時通訳つきながら、終始英語で行われた。
集まった報道陣は200人以上。ジャーナリスト席の半数以上は外国人が占めている。日本語の説明がないまま、おもむろに英語の会見が始まった。日本人記者たちは、あわてて同時通訳のレシーバーを手に取ったが、配付資料は英語で日本語訳もついてない。
「多くの従業員が苦しんでいる」ことは知っていた
資料をスクリーンに映しながら、スピーチが始まった。流暢な英語だ。社内英語公用語化を考えたのは、本社の日本人社員と海外子会社の外国人社員が、通訳をはさんで意思疎通をしていた様子を見たのがきっかけだという。
そこで思い出したのは、社員として採用したインド人や中国人の姿。まったく日本語を話せない彼らは、3か月から半年でそこそこの日本語を習得していた。
「それは、かなりエキサイティングなことだった。日本人だって同じことができるのではないか、と感じた」
2012年採用の日本人の新卒採用では、入社時の条件を「TOEIC 730点」としたが、結果的に平均点が800点を超えたことも、決意を固める要因になったようだ。現在、約8割の社内会議が英語で行われている。
しかし、ここに来るまでには長い道のりがあった。三木谷社長は当時を思い出したかのように、少しだけ苦しげな表情でつぶやいた。
「多くの従業員が苦しみ、ストレスを感じていることははっきりしていた」
そこで、社内に無料の英語クラスを設置したり、業務中の受講を認めるなど、社員に学習の便宜を図った。東京・品川の楽天本社周辺の英会話スクールが、楽天社員でほとんど埋まっていた時期もあったという。