大リストラ時代の40代会社員――残るも地獄、辞めるも地獄

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   日経ビジネス2012.6.18号で「早期退職の経済学」を特集していた。中高年を対象とした大リストラが再燃する中、「今、退職するのは損か得か?」というテーマが取り上げられている。

   退職割増金などの条件次第では「今が最後の辞め時かも」という指摘もあれば、「3分の1は1年経っても就職が難しい」「(独立)開業者の5割は1年以内に廃業」「ホームレスになった早期退職者がいる」といった現実もあり、安易に退職に応じるべきではないとする指摘もある。

出向先の「ブロイラー小屋」で電話勧誘を続ける45歳

「出口」はどこにあるのか
「出口」はどこにあるのか

   記事では、退職勧奨を拒否して会社残留を選んだ人の厳しい現実を「残った者がたどる運命」として取り上げている。

   1991年に大手不動産会社に就職し、主に情報システム部門で19年間働いたD氏は、2008年のリーマンショックを機に資本関係のない生命保険会社に出向を命じられ、保険営業の部署に配属された。

   歯を食いしばって頑張った2年後、営業販売支援会社に再出向。「まるでブロイラー小屋」という狭い部屋に押し込まれた200人の中高年とともに、自分の子どもほどの若いスタッフに監視されながら黙々と電話勧誘を続けている。

   扱う商品は30万円の英会話教材などで、成約することはまずない。手を休めれば監視スタッフの罵声が飛ぶ。D氏によればスタッフの目的は、

「送り込まれた人を精神的に追いつめること」

であり、「1人辞めるごとに依頼企業から報酬が出る仕組みになっているのだと思う」と答えている。ガン療養中の母親を扶養しているD氏は、会社にしがみつくしかなかった。

   一方、会社を辞めた人にも厳しい現実が待ち受けている。ルポライター増田明利氏による『今日、ホームレスになった 平成大不況編』(彩図社)にはリーマンショック以降、職だけでなく家や家族をも失った15人の中高年の声が集められている。

   取材対象には、55歳の元大手電機メーカーの管理職もいた。リストラされたときは47歳、ようやく課長の椅子をつかんで間もないころだった。入社は、ちょうど高度経済成長期が始まる時期。まさか、こんなことになるとは思いもよらなかったことだろう。

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