就職活動を前に「社会人としてどう生きていくか」と思い悩む学生は多い。「世の中にはどんな職業があるのか」といった選択肢の話から、「働くとはどういうことなのか」といったそもそも論まで、考え始めるといろんな疑問が浮かんでくる。
もっと前から、ちゃんと考えておけばよかった――。そうならないために、イマどきの中学校では「総合学習」の時間に「職場体験」というカリキュラムを組み込んでいるという。この活動をリクルートが、社会貢献活動の一環として無料でサポートしている。
取材の成果が「タウンワーク」の形に製本される
中学生の「職場体験」は、事業所見学として以前から「社会科見学」などの名前で行われてきた。リクルートが支援するのは、この体験の前後をサポートし、同社が発行する地元で働きたい人のための求人情報誌『タウンワーク』の「中学生編集版」を作成するノウハウを伝え、体験の結果を冊子にまとめあげることだ。
まずはリクルートの従業員が、編集ノウハウである「見る技術」「聴く技術」「伝える技術」を伝える「出前授業」を行う。ねらいは、中学生自らが「街のシゴト調査員」となり、地域で働く人々の様子を伝える原稿を書き上げられるようになることだ。
授業を受けた中学生は職場体験をしながら、働く人に「仕事にかける思い」や「この仕事に向いている人」などについて取材を行う。原稿は『タウンワーク 中学生編集版』というオリジナル冊子にまとめられ、製本後、学校や職場体験に協力した事業所など、学校周辺の地域へ届けられる。
さらに中学生は、その冊子を手に職場体験先の事業所を再訪し、お礼を言う。また、冊子に掲載された事業所同士が、お互いの仕事や仕事にかける思いを理解しあうきっかけともなり、地域教育活動に関わる人たちの輪ができるというわけだ。
この事業を企画・推進するリクルート・CSR推進室の鹿島由美氏は、職場体験学習からより深いきづきを得るために、このような方法を考えたという。
「職業について授業で教わるだけでは、生徒は『お客様気分』の受け身で終わってしまいます。職場体験学習中に、地域の働く大人へ取材をすることを通じ、自ら近づいていくことで、仕事とは何か、働くことは何かを自分の頭で考えるきっかけになります」
中学生「働くことは大変だけど楽しいこともある」
カフェや介護施設、園芸店や工務店、スポーツクラブなどで職場体験や取材を行った生徒たちからは、
「世の中には職業がたくさんあるから、色々な経験をしないといけないと思った」
「働くことは楽なことじゃなくて大変なことが多い、でもその中で楽しいことだったり、やりがいがあるということがわかった」
「大人の人と接するときや、面接など人に何か伝えるときに役立つと思った」
といった声があがっている。
職場体験に協力し冊子を受け取った事業所は、「細かいところも聞き逃さないで、とても真剣に聞いてくれたんだなあと思った」「来てくれた生徒さんがこの仕事のことを『大変だけどやりがいのある仕事』と感じ取ってくれていることがわかり満足」などと感想を述べている。
職場体験を通じて、仕事とともに「働く人」にも目を向けたこのプログラムは、2011年度グッドデザイン賞「社会貢献活動のデザイン」部門を受賞した。これまでプログラムを体験した中学生は5500人以上、プログラムに参加した従業員は150人を超えるという。