世界三大広告賞のひとつ「カンヌライオンズ」(国際クリエイティビティフェスティバル)が幕を閉じた。ウェブを活用したキャンペーンを表彰する「サイバー部門」においてグランプリ、すなわち世界一をナイキと分け合ったのは、国の公式ツイッターアカウントを市民に貸し出すスウェーデン政府観光局のキャンペーンだ。
このキャンペーンは、ロイターやAP、BBCなど国際主要メディアで「世界で最も民主的なツイッターアカウント」などと報道され、開始から6週間で1980万ドル(15.8億円)に値するPR効果が得られたという。
国の正式アカウントを貸し出し、自由につぶやかせる
「キュレーターズ・オブ・スウェーデン」と名づけられたこのキャンペーンは、スウェーデン国内に住む人に国の正式ツイッターアカウントである「@Sweden」を7日間無料で貸し出し、自由につぶやいてもらうという大胆な企画である。
候補者への応募は、他薦のみ。スウェーデンで訪れて欲しい場所、お勧めしたいこと、自分の意見やアイデアをつぶやいてもらう。ねらいは、世界的規模で潜在的なファンとつながりが持てるツイッターの特性を生かし、伝統的なメディアでは伝わらないスウェーデンの姿を発信していこうというものだ。
市民による投稿は、昨2011年12月10日から開始された。トップバッターはライターで、マーケターでもあるジャック・ワーマーさん。スウェーデン製の調理器具だけでなく、ソファーに寝転がったりパソコンで仕事をしている人の姿など、市民ならではの親近感が湧く写真が投稿された。
このほか、デザイナーや消防士、風力発電所で働くエンジニアや畜産家など、さまざまな職種の市民が「市民管理者」として参加。伝統的なスウェーデン料理、おすすめのスウェーデン映画、牧場でヒツジと戯れる様子などを投稿している。
日本では考えられない自由さと大らかさを感じさせるキャンペーンだが、やはりヒヤッとする事件が起きてしまった。ある女性市民管理者が、「行き過ぎるつぶやき」を連発してしまったのだ。
6月10日からアカウントの管理をまかされたソニアさんは、「ユダヤ人」「ペニス」「ナチス」「ゲイのエイズ患者」「同性愛」「ミルクとオシッコに浸したイチゴ、とってもおいしい」など、公式放送で「不適切」とされる表現や、タブー視されている性的・政治的話題を好んで投稿しはじめたのだ。