遠隔地では不正がエスカレートしやすい
しかも、この容疑者は、同子会社に採用後の2010年10月にニューヨーク州弁護士資格の停止処分を受けていたが、会社側にはそれを隠していたそうだ。弁護士資格があるから採用したのであれば、定期的に資格維持の状況を確認すべきだ。不正着手の時期からみて、資格停止処分が不正の動機の一部になった可能性もある。
学歴、職歴、専門資格保有状況などは、採用選考時の重要な要素である。特に、この事件の容疑者のような要職に中途採用する人材については、求職者の履歴を徹底的に調べ、採用面接においても、様々な角度から質問をして不審な点がないかどうかを確認することが不可欠だ。
例えば、求職者のフルネームをGoogleなどのサーチエンジンに入れて検索するだけでも、過去によからぬ事件に関与していた記事がヒットするかもしれない。また、昨今ではフェイスブックやリンクトインなどのソーシャルメディアに自分のことを積極的に書き込む者も増えており、不正調査における貴重な情報源となっている。
また、海外拠点(さらには本社から離れた国内の地方拠点)に対するチェックは相対的に甘くなりやすい。海外であれば、内部監査もそう頻繁には行けないであろう。そのような状況が、犯人に「見つからない」という認識を与え、不正が徐々にエスカレートしたものと考えられる。
この事件に対して本社は「米国の法律費用は高いという思い込みがあった」とコメントしたそうだが、他国の事情にはどうしても疎くなりがちである。そこも盲点となってしまったのかもしれない。