有休の「退職時取得」がコワイ… お盆にまとめて取らせていいか

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   日本は、労働者の権利である「年次有給休暇」の取得率が最も低い国である。政府の調査では、「みんなに迷惑がかかる」が取得にためらいを感じる理由の1位だったが、お互いの迷惑をカバーし合ってこそ「和の国」ではないのか。

   ある会社では、退職時の有休取得をめぐって、退職者と上司との間でトラブルになった。上司は再発防止のために、人事に「会社がまとめて取らせて残さない」方法を提案したという。

「会社が勝手に使わせるなんて」と反発されそうだが

――製造業の人事です。先月、中堅営業社員の退職者が出たのですが、有給休暇の取得について、ちょっとした揉めごとがありました。

   彼は在職中、ほとんど有給休暇を取得したことがなかったのですが、有効期限が残っている有休を、退職時にまとめて取ると言い出しました。

   しかし営業部長が「そんなことできるはずがないだろ!」と、申請を頭ごなしに拒否したものですから、彼は激怒してしまいました。

「これまで有休の権利を行使できないほど働いてきたのに、どういうことですか? 会社を辞めたら、もう使えないんですよ。今度ばかりは絶対に休みますから」

   そして、その月は1日しか出社せず、月末で辞めてしまいました。部長は「完璧な引継ぎもせず辞めるなんて無責任だ」と納得いかない様子でした。

   しかし社内には、「部長の言いなりだったら、一日も休めなかったな」「部下のことなんてまったく考えていない人だと分かったよ」「私も辞めるときはまとめて取ってやる」と反発する声も。それを聞いた部長は、

「有休の退職時取得は、本当にコワイよな。どうにかして阻止する方法はないものか…。そうだ、お盆休みを有休で取らせて、未消化が残らないようにしちゃえばいいのか!」

と提案してきました。しかし、そんなことをしたら「社員が自由に使えるはずの有給休暇を、会社が勝手に使うとは」と反発を招きそうな気もします。実際、こんなことは可能なのでしょうか――

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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