地方で集めて地方で使う お金の「地産地消」はできないものか

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民間金融機関が公営企業への貸出をすればいい

   ところで、公営企業への資金供給は、政府資金と地方公共団体金融機構が多くの部分を占める。あまり民間の資金が入っているようには見えない。

   逆に自治体に対する資金供給は、今や民間の資金が中心になっている。大抵は国債と同様に、証券市場で資金が調達されてくる。いくらの金利で借りられるかも、入札ベースで決まる。市場原理の世界で、資金が回る世界になっている。

   ただ、自治体の資金需要は多くの場合、道路や河川の整備、あるいは公共目的の建築物の建設などである。どれも基本的には収益を生まない。自治体という徴税権のある団体の信用と、国が最後は助けてくれるという思いから成り立つ資金であり、あやふやな点が多い。

   もし仮に、公営企業への貸出が民間金融機関の手によってもっと行われるようになれば、地方で集めた資金が地方のために使われる可能性がずっと高まる。また、公営企業ごとに資金を集めることになれば、公営企業ごとの事業内容や資産によって、金利も変わることになる。

   アメリカは事実、そうしたしくみで様々な金利で資金が貸し付けられている。ローリスク・ローリターンにものもあれば、ミドルリスク・ミドルリターンのものもある。そうした情報を集めたサイトもネット上に存在し、資金循環の活発化を後押ししている。

   公営企業が民間から直接お金を借りるしくみを構築していくと、お金の地産地消が生まれるのかもしれない。(大庫直樹)

大庫直樹(おおご・なおき)
1962年東京生まれ。東京大学理学部数学科卒。20年間にわたりマッキンゼーでコンサルティングに従事。東京、ストックホルム、ソウル・オフィスに所属。99年からはパートナーとして銀行からノンバンクまであらゆる業態の金融機関の経営改革に携わる。2005年GEに転じ、08年独立しルートエフを設立、代表取締役(現職)。09~11年大阪府特別参与、11年よりプライスウォーターハウスクーパース常務執行役員(現職)。著書に『あしたのための「銀行学」入門』 (PHPビジネス新書)、『あした ゆたかに なあれ―パパの休日の経済学』(世界文化社)など。
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