楽天の従業員向けカフェテリア「楽天食堂」では、2012年2月から月に1回「東北応援フェア」と称したキャンペーンを実施し、被災地支援を行っている。
東日本大震災の発生から1年3か月。全国から支援の手が差しのべられてはいるが、現地の復興は順調に進んでいるとはいえない。いまも避難生活を余儀なくされている人たちが多くいる。今後も継続的な支援が必要だ。
被災地で教わったレシピを、特別メニューに取り入れる
楽天タワーに、「楽天食堂」が07年に開設されたときには、朝食、昼食が無料で提供される社員食堂として大きな話題を呼んだ。定食、ラーメン、そば・うどん、寿司、丼、カレー、パスタ、サンドイッチなどが、それぞれ日替わりメニューで味わえる。
いまでは大阪、福岡を含む全4拠点の食堂で、1日平均5000人が利用している。ここで1日3食とる社員もいることから、使用する食材や調理方法、栄養のバランスにも配慮しているという。身体にもお財布にもやさしい食堂だ。
震災発生後の11年冬からは、被災地支援策「食べて応援しよう!」と連携するフード・アクション・ニッポンに参加し、東北地方の食材を積極的に取り入れてきたという。
12年3月からは、「みんなのうまい東北キャラバン」を実施中だ。社員ボランティアが中心となり、地域のNPOの協力を得て、楽天が提供した素材を使って鍋料理を作る。一般の炊き出しとは異なる参加型のイベントだ。郷土料理の調理は地元の人たちの主導で進められ、避難生活で分断されたコミュニティ再生を目指している。
同時に、4拠点の社員食堂では、月に1回「東北応援フェア」というキャンペーンを開催し、東北の食材を使った郷土料理を提供しはじめている。ここでは、被災地で教わった東北地方の郷土料理が通常のメニューに加わる形で並ぶ。
これまでに提供したメニューは、きしめんのような麺に肉味噌をかけた「盛岡じゃじゃ麺」や、すいとんに似たひっつみ鍋をアレンジした「ひっつみうどん」など、東北の郷土料理を取り入れたものが多い。
このほか、仙台もち豚の豚丼や、三陸産鱈のトマトペペロンチーノ・白子ソースなど、東北の食材を使った料理も人気だったそうだ。12年7月から移行する社内完全英語化に向けて、すべてのメニューは英語表示になっていた。
するめいかを使ったレシピを募集中
筆者が訪れた日には、盛岡冷麺が提供されていた。わんこそば、じゃじゃ麺と並んで「盛岡三大麺」と称される料理だそうだ。
ツルツルとしたこしの強い独特の麺が、喉をするすると通っていく。肉の旨みが詰まった、ピリ辛なスープも美味しい。選べる小鉢は、もずく、ホウレンソウと炒り卵の明太子和え。母の手作りのような味がして懐かしかった。
東北メニューについて20代の女性社員に聞いてみると、
「これまで知らなかった料理が食べられるから新鮮。月に1度の楽しみです」
という感想が聞かれた。実際、冷麺の窓口にはカレーや定食よりもずっと長い列ができていた。きっと毎回人気なのだろう。
楽天では現在、運営する「楽天レシピ」で岩手県釜石市の名物を使った「するめいかレシピコンテスト」を実施している。応募されたものの中から、釜石市の仮設住宅に住むお母さんたちが審査した優秀作を選び、さらにそのうちの1品を「楽天食堂」で提供するという。
ちょっとした工夫のようにも見えるが、数千人が毎日利用する大企業のカフェテリアが取り組めば、その規模や影響力は非常に大きなものになる。多くの人を巻き込んだ温かな取組みを、これからも続けて欲しい。(池田園子)