バーの店主もSNSで客の動向をウォッチしていた

糖の吸収を抑える、腸の環境を整える富士フイルムのサプリ!

   先ごろ、行きつけのバーで飲んでいたら、店主が頻繁にスマートフォンを覗いていることに気づきました。「何か面白いことでもあったの?」と訊ねると、店主ではなく顔馴染みの客が代わりにこう答えました。

「違うよ、今日はヒマだろ? だから、ツイッターやフェイスブックを見て外出している連中の動向を探って、近くにいるようなら来るように声をかけるんだよ(笑)」

奥さんや恋人を気にする人への配慮は大事

   SNSにそんな使い方があったとは…。まるで知りませんでした。そのように顔馴染みに言うと、店主が話しかけてきました。

「そんなのも知らなかったの? キャバ嬢だって、いまじゃメールアドレスの交換じゃなくて、SNSで『つながろうよ』って誘うのが出てきてるんだよ(笑)」

   SNS上で来店の誘いをする時には、あからさまにならないように気を配るのがコツなのだとか。

「奥さんや恋人とかに知られるとマズい人もいるでしょ? だから、投稿にコメントをつけて、そのついでにうまく誘うんだよね」

   たとえば、会食や合コンをしているといった投稿があったら、「ツイッターなら、『おっ、楽しそうですねー。今夜は5~6人ならキャパありますよ(笑)』みたいに、フェイスブックだと料理や店の雰囲気を撮った画像が添付されることが多いから、料理や店を褒めるコメントをつけて、『2次会の席、ウチで取っときます?』とか足しておく」のだそうです。

   そこで、「5~6人のキャパって、今日はヒマなの?」といったコメントがさらについたらしめたもの。投稿した本人だけでなく、その投稿を見ていた他の「つながっている人」が「じゃ、寄るわ」となることもあるからです。

「この間は来れなくてごめん」と言わせる効果あり

   常連さんはもちろんのこと、お馴染みさんにあと一歩、二歩ぐらいのお客さんも実際に来店に結びつくことが少なくない、と店主。ただ、だからといって、SNSにかじりつきということでもありません。

「来てくれればもちろん歓迎ですし、来てくれなくても次の時に『この間は来れなくてごめん』っていうふうに会話になるんですよ。やっぱりコミュニケーションを取らないと、店とお客さんの距離も縮まらないじゃない。その点、会話の出発点をつくるっていう意味でも、常連さんからそこそこ来てくれるお客さんぐらいまでは、SNSを見ておいて話題にしていく、さりげなくこちらの存在感を出しておくと、意外に会話が弾むんです」

   そのうち、GPSで店に居所を把握され、近所にいたら「来店レコメンド」が配信されてくる、なんてことにもなりかねませんか?

「いや、お酒や夜の食事って、お客さんの気分や嗜好、それに予定があってのことでしょう。店側からゴリ押しみたいにしても、来ない時は来ないですよ。変に強引に誘って、それで気分を害される方が、僕らみたいな個人経営の店に取ってはリスク。そこは、キャバ嬢も一緒です。彼女らも、基本は個人なんで。あくまでコミュニケーションのきっかけであって、SNSで直接的に商売をしようなんて考えてませんって」
(井上トシユキ)
井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。東海テレビ「ぴーかんテレビ」金曜日コメンテーター。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社新書)、「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文藝春秋)など。
姉妹サイト