臨床心理士・尾崎健一の視点
賞罰より、本来の残業のあり方を考えるべき
そもそも残業(時間外労働)は本来、会社からの命令で行われるものです。社員個人の勝手な行動ではありません。残業手当は、会社が認めた時間外労働に対する対価なのです。したがって、会社が認めた労働をしたら罰金を取られてしまうというのでは、矛盾します。また、就業時間中に終わらない仕事を命令されているのに、それが終わらないから罰金というのも、まるで二重のペナルティを課されていることになってしまいます。当然、モチベーションも下がるでしょう。これを避けるためには、罰金制度よりも、残業時間が一定水準以下の社員や部署に、報奨金を設ける方が効果があがりそうです。
とはいえ、報奨制度の効果は、時間とともに薄れがちです。結局は、残業が多い部門とその要因を経営者や管理者が把握し、課題や対策を実行することが必要になると思われます。そのうえで、「残業は上司の承認の元で行う」という当たり前のことを徹底する、というところに戻るのではないでしょうか。
(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。