サービス残業を根絶するためには、残業代をすべて支払う必要がある。しかしこれを徹底すると、仕事の遅い人ほど収入が多くなるという矛盾が明らかになってしまう。時短は労働者にとって必ずしもメリットにならなくなるのだ。
ある職場では、仕事の遅い人に対して、残業時間に応じて罰金を支払わせる方法を取っていたが、それを聞いた社長が「全社的に取り組めないか」と面白がっているという。
「残業代はすべて支払っているから問題なかろう」
――流通サービス業の人事です。当社では現在、コストダウンとコンプライアンス、ワークライフバランスを同時に実現するために、「サービス残業の根絶」を打ち出しています。
以前にも増して労働時間の管理を徹底しつつ、発生した残業時間に対する手当は漏れなく支払うようにしています。
さらに各部署では、予算を達成しながら労働時間を減らすよう、さまざまな工夫を行なっています。先日、全社の管理職会議で、社長が「残業代をもっと減らす方法はないか」と出席者に問いかけたところ、ある部長が、
「うちの部では残業1時間につき、社員に100円の罰金を払わせてます。それを半期に一度集めて、部の飲み会費用にあててるんです」
と発言しました。これを聞いた出席者たちは騒然となり、社長は「バカヤロウ!」と怒る…かと思いきや、
「面白い。名案じゃないか(笑)。残業手当は支払ってるんだから、そのくらい問題ないだろう。全社的にできないか、人事で検討してくれ」
と予想外の指示を受けてしまいました。
ただ、懲戒処分の手続きもなく社員から罰金を徴収するなんて、感覚的にはありえないのですが、こんなこと、法的に許されるんでしょうか――