「地方自治体の財政再建」は2025年までがラストチャンスだ

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この10年を逃せば財政の立て直しは難しくなる

   学齢になれば全員が学校に通うので、教育費は必ずかかる。一方、福祉や医療費は、老齢だからといって全員に発生するわけではない。後期高齢者医療費のように、国の負担割合が多いこともあって、自治体では高齢者の増加が極端な歳出増にはつながらない。

   60代くらいの世代は消費性向もそれなりにあるし、税収にも貢献する。ということは、財務面だけから自治体戦略を立てるのなら、高齢者に魅力のある都市づくりを進めていくことも選択肢になりうる。

   壮年中心の都市戦略かどうかは別にしても、シミュレーション結果からは、これから10年くらいの間、自治体の財政が少しだけよくなりそうな気配があることが重要である。年少人口が急激に減り、その割には高齢者の人口が少なく、今と同じ受益者あたりの費用なら、歳出が減る可能性もある。

   逆に、この10年を逃してしまうと、いくら年少人口が減るといってもゼロにはならないから、その減少傾向は横ばいに方向になる。その一方で、高齢者は生産労働人口の定年で、しばらくの間は増え続ける。また、高度成長期に建設した道路、橋梁、建物の老朽化は進み、大量の更新需要が生まれる。

   結果として、財政的にほんのちょっと薄日が射すこの10年を逃してしまうと、ますます自治体の財政立て直しは難しくなる。「自治体の再生」は2025年までがラストチャンスとは、そういうことだ。(大庫直樹)

大庫直樹(おおご・なおき)
1962年東京生まれ。東京大学理学部数学科卒。20年間にわたりマッキンゼーでコンサルティングに従事。東京、ストックホルム、ソウル・オフィスに所属。99年からはパートナーとして銀行からノンバンクまであらゆる業態の金融機関の経営改革に携わる。2005年GEに転じ、08年独立しルートエフを設立、代表取締役(現職)。09~11年大阪府特別参与、11年よりプライスウォーターハウスクーパース常務執行役員(現職)。著書に『あしたのための「銀行学」入門』 (PHPビジネス新書)、『あした ゆたかに なあれ―パパの休日の経済学』(世界文化社)など。
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