ソーシャルメディア(SNS)を活用している社会人を対象に行った調査によると、最も活用しているSNSを「フェイスブック」と答えた人は32.5%を占めたという。ツイッターやミクシィなど他のSNSと併用している人を含めると、利用者はもっと多いだろう。
一方、SNSで企業名(勤務先)を公表している人は、わずか17.6%。ということは、勤務先を明かさずにフェイスブックを使っている人が少なからずいると考えられる。
「他人に自慢できる社名も肩書きもない」
調査はMMD研究所が、社会人611人に実施したもの。実名登録が原則のフェイスブックは、氏名のみならず、生年月日や学歴、勤務先や出身地、居住地などの個人情報を登録する欄が充実している。
個人情報を公開しあうことで、交流が広がったり深まったりするからだ。そこが匿名利用が一般的なツイッターやミクシィとの違いであり、使い方を特徴づける点である。
氏名で検索して同じ学校の出身者なら「あの○○君だよね?」と声をかけやすくなるし、同じ出身地なら親近感もわく。誕生日を登録しておけば、当日に
「今日は△△さんの誕生日です」
と表示され、友達から「おめでとう!」のメッセージが集まる機能もある。勤務先によって、書き込みの信頼性が高まることもあるだろう。
一方で、個人情報の登録の必要性を感じない人もいる。神奈川県内の製造工場に勤めるAさん(38歳男性)は、おもにアニメやゲームの情報収集のためにフェイスブックに登録しているが、個人情報もほとんど登録していない。登録も実名に似せた偽名で行っている。
「SNSに勤め先を書く人は、他人に見せたい社名や肩書きを持ってるんでしょう? 僕なんかヒラの契約社員だし、もし『○○会社で××の製造してます』と書いたって自慢にもならない。何のメリットにもならないんですよ」
会社が「SNS利用禁止」はおかしくないか
個人情報を入れずにフェイスブックを使うと、他の会員からは「この人はどんな人なの?」と思われるのか、友達の申請はほとんどない。ただ、一方的に情報を閲覧するだけなら、特に問題は感じないという。
また、Aさんの勤務先では、従業員に「SNS利用を禁止し、発覚した場合は懲戒処分とする」と通告している。ツイッターの利用者が急増したころ、不用意な書き込みで勤務先に迷惑がかかったり、社員が解雇されてしまうケースがあった。
これを受けて、たとえ会員以外が書き込みを見ることのできないフェイスブックでも、勤務先にバレる情報を極力入力しない使い方をしているようだ。Aさんは、
「どうしても基本情報を埋めなくちゃいけないなら、ウソの情報を入れますよ。海外の一流大学を出て、海外の企業を辞めて独立したことにしたって、バレはしないでしょう。そっちの方がモテるし(笑)」
と冗談めかして言う。しかし、会社が懲戒処分をちらつかせて、プライベートでのSNS利用を規制するのは行き過ぎだろう。
本調査によると、勤務先でSNSのガイドラインを定めていると答えた人は、16.8%にとどまっている。仕事とプライベートを切り離したルール作りが必要な時期に来ているのではないか。