予兆を見逃さないために必要なこと
それぞれが自分のことで精一杯な日常で、「不正」を見抜く注意に労力を費やすことは簡単ではない。ただ、金融機関などで不正を見抜くことに成功した人には、「急に服装や言動が変わった気がした」「なんとなくおかしな感じがした」といっている。
横領を完璧に予防できるシステムは存在しないし、そのためだけに多額のコストをかけることも許されない。であれば、小さな兆候に気づき、傷を大きくしないことも重要である。
A氏と日々接していた家族、上司、同僚、相談を受けた住職など「今から思えば」ということが少なからずあるのではないか。
そのためにも「この人なら絶対安心」という思い込みをやめ、お互いに相手へ関心をもって日々顔を見ながら会話を交わし、小さな変化を見過ごさないことであろう。
特に、管理者にとっては、部下一人ひとりや職場の雰囲気、そして日々目にするデータや書類に細心の注意を払い、異常値を見逃さないことこそが重要な職務だといえる。(甘粕潔)