公営企業の下に潜む「埋蔵金」を掘り起こせないものか

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民間人には理解に苦しむ「官同士の調整」の難しさ

   さらに、過去の分もさかのぼって、お金集めと金貸しの期間を一致させることができないものなのか。残念ながら現在の制度では、部分的にしか実行できない。

   借り手の公営企業は、超長期の借入を繰り上げて返済できることになっている。ただし、自治体の財務状況が悪い場合で、年度ごと全国での繰り上げ返済の上限枠の中でしかできないという一定の条件が課せられている。民間人にとっては、なかなか理解に苦しむ論理である。

   機構は、自治体の共同出資の組織だ。自治体出資団体と自治体の話し合い次第で、なんとかなるのではないか。また、公営企業債の多くは「公営企業金融公庫」という政府系金融機関から機構が受け継いだものである。こちらも、貸し手だった国と自治体の関係で柔軟に対処できないものなのか。

   法律改正を含む制度改革が必要なら、自治体同士、あるいは国と自治体の間で調整すればよい。民間同士の利益配分を巡る、ややこしい議論にはならないのではないか。いや、もしかすると官同士の方が、民間以上にややこしいのかもしれないが。

   もうひとつ気になるのが、これからの市場金利動向だ。国債が暴落して金利が上昇する可能性は否定できないから、超長期で借りていた方が結果としてよかったということもありえる。それでも僕は「埋蔵金」の存在も鑑み、超長期の借入の繰り上げ返済について、もっと議論を深めて行った方がよいように思えてならない。(大庫直樹)

大庫直樹(おおご・なおき)
1962年東京生まれ。東京大学理学部数学科卒。20年間にわたりマッキンゼーでコンサルティングに従事。東京、ストックホルム、ソウル・オフィスに所属。99年からはパートナーとして銀行からノンバンクまであらゆる業態の金融機関の経営改革に携わる。2005年GEに転じ、08年独立しルートエフを設立、代表取締役(現職)。09~11年大阪府特別参与、11年よりプライスウォーターハウスクーパース常務執行役員(現職)。著書に『あしたのための「銀行学」入門』 (PHPビジネス新書)、『あした ゆたかに なあれ―パパの休日の経済学』(世界文化社)など。
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