昔の名刺は「○○株式会社営業第一部第二課課長補佐」といった、部署名中心の肩書きが多かったそうだ。しかし仕事の中身や責任が分かりにくいので、「プロダクトマネジャー」や「マーケティングマネジャー」といった肩書きが出てきたという。
カタカナが多いのは、職務を重視する欧米を参考にしているからだろう。最近ではそれが行き過ぎて、名刺やSNSのプロフィールに見慣れない肩書きが増えたように思える。そこでこの際、これまで出会った肩書きを整理してみることにした。
営業課長を「ヴァイスプレジデント」と呼ぶ会社も
まずは、よく目にしてはいたが、どういう意味でどういう使われ方をしているのか分からなかったものから。
1.アカウントエグゼクティブ
最初この肩書きが刷られた名刺をいただいたとき、「エグゼクティブって管理職? 若いのにすごい!」と思ったものだ。でも、話を聞いてみると、広告代理店のフツーの営業社員さんだった。
仕事は、クライアントと制作の間で調整をすること。「勘定の責任者」だと考えれば理解できるけれど、普通に「代理店の法人営業」でいいのに、と思ったのが正直なところだ。
2.エバンジェリスト
最初は「なぜキリスト教の伝道師が?」と驚いた。外資系のIT企業では、最新技術を分かりやすく説明する役目らしい。いまでは普通の商品やサービスのよさをアピールする担当をこう呼ぶこともある。
現業部門の広報担当と考えればいいだろうか。4年前にgooが発表した「よくわからない肩書きランキング」で堂々の1位を獲得していたが、いまだにあまり広まっていない様子だ。
3.ヴァイスプレジデント
直訳は「副大統領」だが、意外と若い人が持っていることが多い。一説には社内的な扱いは「営業部長」や「営業課長」という会社もあるという。
営業がクライアントの責任者と接するとき、肩書きが小さすぎると釣り合いが取れないので、あえて格式の高そうなカタカナの肩書きをつけることがあるみたいだ。
4.センシティビィティマーケター
確かにマーケティングは、数字やデータの分析だけではつかまえられないところがある。とはいえ「感性」だけをあまり押し出されると、「この人は論理的な思考が不得意なのかな」と思ってしまう。女性=感性というのが安易だし、「誰でもできそう」感にも頼りなさを感じてしまう。
「フリーエージェント」は職業なのか
さらに最近では、造語のような肩書きを作る人もいて戸惑うことがある。おそらく自己アピールというか「セルフブランディング」の一環なのだろうが、相手が理解できなければ自己満足で終わりそうだ。
5.フリーエージェント
直訳すれば「自由契約」。戦力外通告で契約解除されてしまったプロ選手みたい。会社=職業の考えも古いが、「組織にとらわれない働き方」が職業と言われても困る。
デザイナーとかライターとか、主要なスキルを相手に伝えたほうが分かりやすいのに。「職業は私。何屋とは決めたくない」というやつですかね。
6.ネットビジネスマン
ネットを高度に使いこなす「ネット・ビジネスマン」かと思いきや、ネットでの商売を生業とする「ネットビジネス・マン」という色合いが強い。
SNSのプロフィール欄で見かけるが、書き込みを見ると、アフィリエイター(ネットの成果報酬広告でお金を稼ぐ人)や情報商材を売る人だったりする。
7.プロネットサーファー
どんな分野にも一流の人はいる。海にプロサーファーがいるように、ネットにも凄いスキルを持ったネットサーファーがいるのかもしれない。ただ、スキルが高いだけではプロとはいえず、お客からお金をもらったりスポンサーがついたりして、初めてプロになることを忘れないでもらいたい。
以上、今回は目につくところから取り上げてみたが、このほかにも「コミュニケーションストラテジスト」や「ソーシャルメディアチャンスコーディネーター」といった耳慣れないカタカナ肩書きもあった。これから新しい肩書きも生まれそうなので、今後も引き続き追っていきたい。(池田園子)