「督促」は攻めと守りのハイブリッド感情労働?
そして、この本でもう一つの代表的な感情労働とされているお仕事が「集金人」です。
集金人は、好んで言いたくもない「お金を支払って下さい」という言葉を、仕事のために言わなければなりません。相手の言うことに耐えるのが守りの感情労働なら、集金人は攻めの感情労働というわけです。
ということを踏まえて、私のやっている「督促」のお仕事を見てみると……。アレ? お客様にひどいことを言われても黙って耐え、「お金返してください」と言わなければならない仕事って、「攻め」と「守り」の感情労働を兼ね備えているような……?
なるほど、それで「感情労働の中の感情労働」と言われたわけですね。
なお、感情労働は、肉体労働をするには体力が伴わず、頭脳労働をするにはスキルが満たない、職業をあまり選ぶことができない弱い立場の人々に押しつけられがちです。
いま仕事を探そうとすると、求人があるのは飲食の接客業や、営業、コールセンターのオペレーターなどの感情労働ばかり。確かに、非正規雇用で働く人が担うことが多いのが現状です。
これらのお仕事は精神的な負荷が大きい割に賃金が低く、そのうえ精神的に負った疲労は肉体や頭と違ってなかなか取れにくいものです。このように感情労働は、肉体労働や頭脳労働に取って替わり、現代の雇用の中で拡大を続けているのです。(N本=えぬもと)