「えっ、督促なんて仕事してるんですか? すごいですねぇ、感情労働の中の感情労働じゃないですか!」
ある日参加した交渉術に関する勉強会で、たまたま隣に座った心理学者の卵だと言う男性に「督促をしています」と自己紹介をすると、突然こんな事を言われました。
(……感情労働?) 聴きなれない言葉に、その場ではポカンとしてしまいました。でも、なんだか気になり調べてみると、最近「感情労働」というお仕事が注目されていることを知りました。
笑顔で接客し、クレームにも耐えている客室乗務員
感情労働とは、「肉体労働」「頭脳労働」に続いて出現し、近年増加している労働形態だそうです。
肉体労働は体を使って作業を行った労力を賃金に変え、頭脳労働は頭を使って生み出したアイデアなどを賃金に変えます。感情労働とはその名の通り、自分の感情を抑制することで賃金を得るお仕事のことです。
感情労働については、A.R.ホックシールドの『管理される心――感情が商品になるとき』という本で詳しく紹介されています。この中では感情労働の代表的な職業の一つとして、客室乗務員(CA)のお仕事があげられています。
CAは飛行機に搭乗するお客さまに、笑いたくなくても常に笑顔で接客をすることを求められます。また、クレームを言われても言い返すことなく耐え、お客さまにサービスをして、相手の自尊心を満たし満足させることを要求されます。
お客さまにいきなり「ブス!!」「馬鹿!」と罵られたりしても、言い返すことは許されないそうです。理不尽な悪口にも耐えて「ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません」と謝罪しなければなりません。
そこで反論しようものなら、即座に上司が飛んできて叱られます。なぜならCAは個人ではなく、会社の一部だから。言い返すと航空会社が「お前の会社はサービスがなってない!」と責任を負わされることになります。
同じように相手の言うことに耐えるタイプの感情労働には、ウェイトレスやホステスなどの接客業、看護師、苦情対応専門部署、カスタマーセンターやコールセンターで働くオペレーターなどがあります。