非正規雇用に押しつけられる「感情労働」のお仕事

糖の吸収を抑える、腸の環境を整える富士フイルムのサプリ!
「えっ、督促なんて仕事してるんですか? すごいですねぇ、感情労働の中の感情労働じゃないですか!」

   ある日参加した交渉術に関する勉強会で、たまたま隣に座った心理学者の卵だと言う男性に「督促をしています」と自己紹介をすると、突然こんな事を言われました。

   (……感情労働?) 聴きなれない言葉に、その場ではポカンとしてしまいました。でも、なんだか気になり調べてみると、最近「感情労働」というお仕事が注目されていることを知りました。

笑顔で接客し、クレームにも耐えている客室乗務員

肉体労働でも頭脳労働でもない督促の「感情労働」(イラスト:N本)
肉体労働でも頭脳労働でもない督促の「感情労働」(イラスト:N本)

   感情労働とは、「肉体労働」「頭脳労働」に続いて出現し、近年増加している労働形態だそうです。

   肉体労働は体を使って作業を行った労力を賃金に変え、頭脳労働は頭を使って生み出したアイデアなどを賃金に変えます。感情労働とはその名の通り、自分の感情を抑制することで賃金を得るお仕事のことです。

   感情労働については、A.R.ホックシールドの『管理される心――感情が商品になるとき』という本で詳しく紹介されています。この中では感情労働の代表的な職業の一つとして、客室乗務員(CA)のお仕事があげられています。

   CAは飛行機に搭乗するお客さまに、笑いたくなくても常に笑顔で接客をすることを求められます。また、クレームを言われても言い返すことなく耐え、お客さまにサービスをして、相手の自尊心を満たし満足させることを要求されます。

   お客さまにいきなり「ブス!!」「馬鹿!」と罵られたりしても、言い返すことは許されないそうです。理不尽な悪口にも耐えて「ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません」と謝罪しなければなりません。

   そこで反論しようものなら、即座に上司が飛んできて叱られます。なぜならCAは個人ではなく、会社の一部だから。言い返すと航空会社が「お前の会社はサービスがなってない!」と責任を負わされることになります。

   同じように相手の言うことに耐えるタイプの感情労働には、ウェイトレスやホステスなどの接客業、看護師、苦情対応専門部署、カスタマーセンターやコールセンターで働くオペレーターなどがあります。

債権回収OL・N本(えぬもと)
某金融機関で債権回収部門に所属する20代OL。コールセンターで支払延滞顧客への督促を担当している。入社半年で3億円の回収を達成して頭角を現し、10万件の顧客を担当する精鋭チームに最年少で配属された実績を持つ。他人に強く言えない気弱な性格を逆手にとり、独自の「交渉メソッド」を開発。300人のオペレーターを指導しながら、年間2000億円の債権回収に奮闘している。好きなものは、ビールとスイカ。ブログ「督促(トクソク)OLの回収4コマブログ」。(本コラムは当事者のプライバシー保護のため、一部事実と変えている点があります。)
榎本まみ:督促OL 修行日記
榎本まみ:督促OL 修行日記
  • 発売元: 文藝春秋
  • 価格: ¥ 1,208
  • 発売日: 2012/09/22
姉妹サイト