外資系金融機関で高給を得ている人は、頭が良くて自分の都合を最優先させる――。お互いを思いやらず、職場もギスギスしているというイメージはないだろうか。
しかし実際の社内の人間関係は、意外にも良好だという指摘もある。『クーリエ・ジャポン』2012年6月号の特集記事「あの『有名企業』で働いてみたら 知られざる“外資系”の社内事情」では、ゴールドマン・サックス(GS)の元社員が社内の様子を明かしている。
いまでもGS出身者の集まりには顔を出すという東京オフィスの元トレーダーは、社員の働き方についてこう語っている。
「GSでは、チームワークが苦手な人は出世しない」
「チームワークができていない人は逆にクビになる。自分一人でできると過信しているんでしょうね」
転職の多さが「チーム重視」につながっている
その理由は、外資系金融機関の「転職の多さ」による。誰かが突然抜けてしまっても、仕事が中断することのないように、常にチームで情報を共有して仕事をする体制になっている。
外資では個人成績のみが重視され、よりよい条件があれば後のことは考えずに飛び出してしまうのではと思っていたが、転職が多いからこそ業務の引継ぎは重要視されているようだ。
確かに、いくら人材が流動化しているとはいえ、他人に迷惑をかけて平気で辞めるような人を迎え入れたい会社はない。そんな人は業界では生きていけなくなってしまう。
もうひとつの理由は「業績評価方法」によるものだ。GSに限らず外資系金融会社では、本人の業績を上司だけでなく同僚や後輩など十数人が行うところが少なくない。このため、
「仕事はできるが、周りからやりずらいと思われている人」
は評価が低くなる。スタンドプレー志向ではやっていけそうにない。
360度評価は、評価の公平性を追求するために導入されたと思われるが、協調性をもって仕事をする方向に機能しているところが興味深い。
職場のチームワークの悪さや評価の不公平感に悩む人から見ると、報酬の高さもあいまって、うらやましい環境に映ることだろう。
もちろん「外資系金融」といっても米国系や欧州系、さらにはアジア系などさまざま。欧米系も一時ほどの高待遇はなくなり、このところの金融不安などで最近の社内環境は厳しくなっているとも言われている。「チーム重視」はいまでも続いているだろうか。