ビール350ミリリットルあたり酒税は77.7円。ビールの小売価格は215~240円くらいだから、およそ3分の1が税金ということになる。
夏の暑い盛りに仕事が終わって、ビールをごくんと一飲みする。そうしたときに3分の1が税金かと思うと、折角の解放感も台無しになりそうである。しかし、これ以上に知ってしまうと寒くなるものが水道料金である。
地域格差は10倍超。広域化が必要なところも
水道事業は、基本的には自治体の事業である。那須町のように民間委託をしているところは、ごく一部の例外を除いてない。しかし、よく知られるように海外では水道事業が公共団体によって提供されているとは限らない。フランスやイギリスなどでは、民間会社によるサービスがむしろ一般化されている。
日本の水道料金は高いとか安いとかあまり議論されることはないが、地域によって思いのほかバラつきが大きい。最も安い地域が山梨県の河口湖南(河口湖町と勝山村)で、10立方メートルあたり335円ほど。逆に最も高い地域が群馬県の長野原町で同じ体積で3,412円ほどになる。格差は10倍を超える。
こうした格差は、水道事業を行う上での設備の違いなどにもよる。取水設備や浄水場の浄水方式、利用する企業や家庭の密集具合によっても、配水費用に大きな差が生まれる。水道事業の基本は市町村ごとの独立採算だから、こうした格差も仕方がないのかもしれない。
ただし、水源(河川など)ごとに水道事業を事業統合をすれば、こうした費用格差も減るであろうし、ピークデマンド(最大配水量)を考えて不要となる浄水場などの設備を効率化できる。その意味において、民営化まで一気に行う必要がないかもしれないが、広域化すべきところもあるように思える。
このほか、どうしても気になってしかたがないのは、金融費用の大きさである、2010年度において、水道料金の9%近くが利払いの費用になっている。2008年度までは、利払い費用が水道料金の10%を優に超える状況が続いていた。
僕たちの飲んでいる、あるいは風呂や洗濯につかう水の10%程度が利払いの費用だということに、どうして合点がいくだろうか。公共料金の代表格である電力やガスの場合、利払い費用は料金のだいたい2~3%の範囲にある。水道料金は突出して高い水準にあるのである。
「超長期の借入」がデメリットに転じている
こうした実態を引き起こしているのは、水道事業が超長期、つまり20年とか30年とかの期間で借入している部分が少なくないためである。
民間企業なら20年、30年後、どうなっているか分からないので、そうした超長期にわたって融資をしてくれる金融機関は基本的にない。あっても、かなり高い金利を支払うはめになるから、事実上、超長期の借入はなくなる。
しかし、公営企業である水道事業は、地方自治体が行う事業である。暗黙の政府保証もあるので、超長期の借入ができる。また、そうした借入ができるように専門の金融機関がある。かつての公営企業金融公庫、今の地方公共団体金融機構である。
水道事業を営む公営企業からも、超長期の固定金利で借りることは、メリットがあると思いこまれている。予算が立てやすく、世代を超えて利用者が公平に負担することになると信じられているからでもある。
実際は、超長期で借りることで膨大な利払いをしていることに気づくのが遅れたようである。人口減少が進む社会では、たとえ年度ごとの利払い額が同じでも、個人あたりに直すと負担が増すことになる。結局のところ、超長期で借り入れることのメリットは逆にデメリットになってしまっている。
公営企業である水道事業であっても、時代環境に合わせた改革が必要な時期が訪れているように、僕には見える。(大庫直樹)