料金の1割は「利払い」!? 水道事業の奇妙な収支構造

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「超長期の借入」がデメリットに転じている

   こうした実態を引き起こしているのは、水道事業が超長期、つまり20年とか30年とかの期間で借入している部分が少なくないためである。

   民間企業なら20年、30年後、どうなっているか分からないので、そうした超長期にわたって融資をしてくれる金融機関は基本的にない。あっても、かなり高い金利を支払うはめになるから、事実上、超長期の借入はなくなる。

   しかし、公営企業である水道事業は、地方自治体が行う事業である。暗黙の政府保証もあるので、超長期の借入ができる。また、そうした借入ができるように専門の金融機関がある。かつての公営企業金融公庫、今の地方公共団体金融機構である。

   水道事業を営む公営企業からも、超長期の固定金利で借りることは、メリットがあると思いこまれている。予算が立てやすく、世代を超えて利用者が公平に負担することになると信じられているからでもある。

   実際は、超長期で借りることで膨大な利払いをしていることに気づくのが遅れたようである。人口減少が進む社会では、たとえ年度ごとの利払い額が同じでも、個人あたりに直すと負担が増すことになる。結局のところ、超長期で借り入れることのメリットは逆にデメリットになってしまっている。

   公営企業である水道事業であっても、時代環境に合わせた改革が必要な時期が訪れているように、僕には見える。(大庫直樹)

大庫直樹(おおご・なおき)
1962年東京生まれ。東京大学理学部数学科卒。20年間にわたりマッキンゼーでコンサルティングに従事。東京、ストックホルム、ソウル・オフィスに所属。99年からはパートナーとして銀行からノンバンクまであらゆる業態の金融機関の経営改革に携わる。2005年GEに転じ、08年独立しルートエフを設立、代表取締役(現職)。09~11年大阪府特別参与、11年よりプライスウォーターハウスクーパース常務執行役員(現職)。著書に『あしたのための「銀行学」入門』 (PHPビジネス新書)、『あした ゆたかに なあれ―パパの休日の経済学』(世界文化社)など。
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