「休暇を取りたがらなくなる」のも不正の兆候だ
A氏の上司は「お金に困った様子もなく、逮捕は『まさか…』という思い。非常に有能で、将来を期待していたのに」と述べている。
しかし、少なくとも同時に2人が横領を手がけている状況から考えても、仕事のシステムや組織風土、そして何より「上司の注意力」に問題があったのではと疑わざるを得ない。
例えば、横領の隠ぺいを図る者は、職場での自分の仕事を人に見られるのを極度に嫌うことから、その心理が次のような兆候に表れやすいといわれている。
・パソコンで作業をしている時に、後ろを通りかかると、あわてて画面を隠したり変えたりしようとする。あるいは、話しかけるとビクッとする
・自分の席のパソコンではなく、あえて人目につきにくい場所にある端末を使って作業をする
・急に早朝出勤や残業、休日出勤が増える(一人で作業できる状況をつくりたいため)
・休暇を取りたがらなくなる(休んでいる間に不正がバレないか心配なため)
・他人の仕事まで積極的に引き受けようとする(ダブルチェックによる発覚を避けたいため)
・周囲に対して感情的な言動が増える。あるいは急に寡黙になる
上記のような「怪しい兆し」は、仕事熱心な社員と勘違いしやすいが、「よくがんばってるな」と片付けてはいけない。特に急な変化には要注意だ。どんな優秀な社員でも不正をする可能性があるということを、経営者や管理者は念頭においておくべきだろう。(甘粕潔)