「30代半ば以降の賃下げ」に踏み切るNTTは良心的な会社である

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「中高年の賃下げ」と「若手の昇給抑制」どっちがマシか

   ところでこの問題はNTTだけではなく、日本企業全体が直面しているものだ。なぜ他の会社からは具体的な動きが伝わってこないのか。

   実は、再雇用義務化に対する対策は「現役社員の賃下げ」だけではない。むしろ多くの企業は「中高年の賃下げ」という骨の折れるプロセスを敬遠し、「20~30代正社員の昇給抑制」で対応するだろう。

   加えて、労使一体となって下請けや非正規雇用労働者への支払いをカットしようともするはずだ。日本全体でみれば、中高年は辛うじて逃げ切る一方で、若手は昇給が抑制され、非正規雇用はますます貧乏になるだろう。この20年間行われてきたことの繰り返しである。

   そういう汚れ仕事に手をつける前に、先手を打って「30代半ば以降の賃金カット宣言」を出すNTTは、実に良心的で品のある会社だと言えるだろう。むしろ、

「この手の話を労組も人事もまったくしていない」

という会社で働く若手は、自分の給料の心配をした方がいい。20年後、君の賃金は今の中高年より何割か低くなっている可能性が高いからだ。誰も泣く人がいない場合、たいていは年齢が一番下の人間が泣くというのが、この国のルールである。(城繁幸)

人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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