すっかり生活の一部に根付いた感のあるソーシャルメディア。SNSと呼んだことすら過去のものとなりつつあり、今では単に「ソーシャル」と略して言うのが一般的になっているようです。
そのソーシャルの利用で、もっともホットになりそうなのが企業や団体が独自に持つソーシャルです。
「コミュニティ・ビルダー」で独自SNSを構築する企業も
「現在はフェイスブックやツイッターを使っているところがもちろん多いんですけど、ソーシャルメディアの構築パッケージが相次いで投入されていて、普通の企業などでも気軽に導入できるようになっているんです。海外ではコミュニティ・ビルダー、略してCBパッケージがたくさん発表されていますよ」
こう話すのは、都内でソーシャル導入の支援を手がける会社社長。流れとしては、イーコマースの分野で販売力やブランド力のあるショップが、ショッピングモールから独自ドメインへと移行した感じに似ているのだとか。
「ソーシャル利用の一義的な目的としては、企業や特定の製品のファンづくり。同じ目線に立てるという特性があるから、既存メディアではできない顧客との深い関係性をつくるのに適しているわけです。それをもう一歩押し進めて、新卒採用の部分で使おうという企業が昨年から出始めています」
就職・採用活動では、学生と企業とが戦う相手のようになってしまい、結果的にどちらも素を出せずに「良い子、良い企業」を演じてしまうことが多くなる。
互いに誤解したまま入社となって、後からマッチングが間違っていたと気づくのですが、学生にとっても企業にとっても、時間とコストの無駄遣いでしかありません。
そこで、オフィシャルだけどパーソナルなコミュニケーションをはかることができるソーシャルに注目が集まっている、というわけです。背景として、スマートフォンの急速な浸透は見逃せない要素なのだと、この会社社長。
「親としても、パソコンとケータイを買い与えるよりも、スマホ1台の方が負担が少なくて済むのでしょうか。学生のスマホ所持率はかなり上がってきています」
採用担当者との「素のコミュニケーション」がポイント
スマホなら、たとえば説明会の会場案内など少々容量のある文書や画像をアップしても閲覧できますし、ソーシャルを利用することで、やり取りのログやデータがすべて企業の手元に残ります。
現在は、担当者からの情報提供のほか、担当者自身の普段着の姿を見せることにより、その会社での生活にリアリティを持ってもらおうというのが主な目的、というのが一般的だとか。
将来的には遠方の学生のためのバーチャル会社見学や、バーチャルOB訪問などの実施も検討されていくようです。
「何より担当者が学生の間で、その会社のスター、兄貴分のようになるので、お互いが素を出してコミュニケーションできるのが良いですよね。他社やライバル会社に入社したとしても、どこで繋がるかわからないのが会社の世界。素のコミュニケーションで培われた人脈というのは、就職・採用活動が終わっても長続きするのではないでしょうか」
ひと昔、ふた昔前、入社後に異業種交流会を催すのが流行りました。これからは、ソーシャルとスマホの浸透によって、就職・採用活動が起点となって、入社前に構築された人脈や交流が存在感をもってきそうですね。(井上トシユキ)