あるシンクタンクの研究員が「クールビズ手当」の創設を提唱している。企業の節電によって電力会社に支払う料金が減るはずなので、その分を働く人に還元してもいいのではないか、という意見だ。
東京電力では今年7月からの電気料金の値上げを申請しているが、仮にこれが認められたとしても、節電の努力で経費が浮くはずであり、これがそのまま企業や株主の利益になるのは「どこか引っかかる」という。
節電で浮いた「特別利益」を働く人々に還元してもいい
この意見は、ニッセイ基礎研究所のサイトに「あってもいいんじゃない?クールビズ手当て」と題して掲載されたもの。筆者は、金融研究部門に所属する井出真吾・主任研究員だ。
井出氏は、通勤電車やオフィスなどでエアコンの設定温度を上げることで、企業の経費は浮くが、従業員が「暑さ対策」のために購入するクールビズ商品などの費用の多くは個人負担になると指摘する。
節電前の月間料金を100としたとき、仮に17%の電力料金値上げが実施された場合でも、企業が30%の節電をすれば料金は81.9にとどまる。つまり値上げ後でも、企業は従前の電気料金の2割弱に相当する経費を浮かせている計算になる。
「もし節電で浮いた“特別利益”があるなら、その企業で働く人々に還元してもよいのではないかと思う」(井出氏)
振り返れば2011年の夏、各社のオフィスで大々的な「節電」が叫ばれた。これにより回避された計画停電や大規模停電があったかもしれないが、各企業は間接的に少なからぬ経済的利益を得たはずである。
一方、11年のアパレル市場がクールビズ需要で4年ぶりに売り上げが増加したように、個人の負担は増えている。企業だけが得をして、個人にしわよせが行くのは確かに疑問だ。
井出氏は、11年夏のブログで「自分は節電中も常にネクタイを着用している」とクールビズを否定した大企業の経営者を、こう批判している。
「そのお言葉、御社の工場に勤務している方々や、営業で炎天下を歩き回っている方々に正面から言えますか?」
節電の呼びかけに汗だくになって苦労しているのは、現場で粛々と従うサラリーマンたち。今年の夏は「逆襲」があるだろうか。