「ふぞろいの地方自治」のすすめ 全国一律の自治サービスは必要か

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住民意思にもとづくフレキシブルな経営もありうる

   アメリカは自治体の階層構造をみても、より複雑である。州、郡(County)、市(City)の3層構造が一般的だが、ニューヨーク市の場合、郡を包含するように市が拡張してきた歴史がある。

   マンハッタン島のニューヨーク郡が、19世紀末に周辺のクイーンズ郡の一部、それとキングス郡、ブロンクス郡、リッチモンド郡と統合されて、今のニューヨーク市になった。郡の持っていた行政機能は限りなく形式化し、今ではニューヨーク市のマンハッタンやブルックリンなどの区がとって変わるようになった。

   街が発展すると情報集積が高まる。それに合わせて企業が拠点を構え出す。企業の拠点は人口増加を呼び起こし、住宅は郊外に向けて広がり、鉄道や道路などの交通インフラが行政単位を超えて伸びていく。経済発展が自治体組織を変えていった経緯がある。

   こうした実情を知るにつけ、日本の自治体構造や、自治といいながら全国一律となっている地方税体系、基準財政需要額にもとづき予算を策定して全国で同様の自治サービスを受けられるしくみに、違和感を覚えてくる。

   国があって都道府県があって、市町村がある階層構造が最適解か。また、全国どこでもそうあらなければいけないのか。

   経済発展のあり様は、地域によって異なる。また、自治とは地域住民の意思にもとづくものであるべきである。その結果、地域ごとに異なる自治サービスの範囲や運営方法が生まれてきてもよいはずだ。

   1億2000万人を抱える日本。地域ごとに歴史や文化が違えば、経済状況も異なる。こうした相違にもとづく自治のしくみの多様化を認めてもよいのではと思う。少なくともアメリカやイギリスはこうしたフレキシビリティのもとで、国と自治体の協調が図られているように見受けられる。(大庫直樹)

大庫直樹(おおご・なおき)
1962年東京生まれ。東京大学理学部数学科卒。20年間にわたりマッキンゼーでコンサルティングに従事。東京、ストックホルム、ソウル・オフィスに所属。99年からはパートナーとして銀行からノンバンクまであらゆる業態の金融機関の経営改革に携わる。2005年GEに転じ、08年独立しルートエフを設立、代表取締役(現職)。09~11年大阪府特別参与、11年よりプライスウォーターハウスクーパース常務執行役員(現職)。著書に『あしたのための「銀行学」入門』 (PHPビジネス新書)、『あした ゆたかに なあれ―パパの休日の経済学』(世界文化社)など。
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