僕が自治体経営のあり方を深く考えるようになったのは、2009年からだ。大阪府の特別参与になり「大阪都構想」に関わったほか、21世紀政策研究所のプロジェクトで自治体の持つ資産や負債の生産性向上について提言に関わる機会にも恵まれた。
結果として、今の日本の自治体経営はあまりにも杓子定規で測られ、しくみが固定化されすぎているように思えてならない。「地方自治」に対する考え方を見直す時期に来ているのではないか。
世界にはまだら模様の自治行政組織がある
日本の行政組織には、国があって、都道府県(広域自治体)があって、市町村(基礎自治体)がある。東京都の特別区を除けば、日本全国どこに行っても、この3層構造に変わりがない。
しかし、国内均一が世界の常識ではない。たとえばイギリスはかなり複雑な構造をとっており、連合王国であるので、当然イングランドとウェールズ、スコットランド、北アイルランドで構造が違う。
イングランドでも、ロンドンとそれ以外で違う。ロンドンのGreater London City (GLC)はサッチャー政権時代に解体され、Boroughと呼ばれる行政区を国が直接管理する状況となった。しかし1999年に、再び広域自治体によってBoroughを取りまとめるような構造に移行する。この広域自治体であるGreater London Authorityはロンドン独自のものであって、他に類型をみない。
ロンドン以外も、地方自治体がカウンティーとディストリクトの2層制の部分と、ユニタリーによる1層制が混在している。
アメリカはというと、もっと混沌としている。そもそも自治体は国によって定められたものではない。地元住民の意思によって自治憲章がつくられ、それを州政府が認めて法人格をもった自治体が生まれる。そのため、自治体という法人格がない地域に住んでいる住民も少なからず存在する。
当然ながら、地方税のしくみも違うし、自治体が提供するサービスも違う。都会に住んで高い税金を払って、便利な生活を選択することができる一方、安い税率で自治サービスはあまり充実していないが大自然を満喫することも選択できる。
自治とは住民の選択と意思によるものだとすれば、むしろこの方が正しいように思う。