各労働者に「裁量」と「責任」を付与すべきだ
このアングルは、かつて共産主義で行われていた「計画経済」とよく似ている。中央官僚が生産から配給はもちろん、学生の就職先まですべてを計画するという一見効率的なシステムは、凄まじい非効率なシステムと化して崩壊した。
よく日本の政治経済は「最後の社会主義体制」と言われるが、筆者は雇用システムこそ、究極の社会主義システムだと考えている。
そこにメスを入れて効率化するには、労働市場を流動化し、各労働者に裁量とセットで責任を与えるしかない。具体的には、職務給として業務範囲を明確化し、処遇を柔軟に見直せる仕組みを認めることだ。
だが現実には、厚生労働省は相変わらず正社員制度死守の姿勢だし、民主や自民といった既成政党からは労働市場改革のかの字も聞こえてこない。というわけで、大変残念なお知らせではあるが、21世紀の日本人も「そんなに儲かってないはずなのに、なぜか休暇は少なくて長時間労働」という奇妙な状況は変わらないだろう。
もっとも、みんなが未来に希望を抱けていた高度成長期ならともかく、今の日本人が、そんな状況にいつまでも耐えられるとは、筆者は思わないが。(城繁幸)