ビジネスパーソンが知っておきたい「世間話」の功罪

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   みなさんは、仕事で出会うお客さまや会社の上役と「世間話」をしますか? 世の中のできごとをめぐる当たり障りのない話のことですが、若手ビジネスパーソンに取材したところ「まったくしない」と答える人の多さに驚いたことがありました。

   その一方で、仕事上の地位があがるにつれて、人間関係を円滑にする会話の必要性を感じるようになったという人もいました。ネットで「世間話」を検索すると、「世間話ができない」「世間話が苦手」といった言葉が次々と候補にあがってきます。それだけ悩んでいる人がいるということでしょう。

雑談や無駄話ではない「3つのねらい」を理解する

世間話は「雑談」や「無駄話」ではない
世間話は「雑談」や「無駄話」ではない

   世間話は、一般的に「雑談」や「無駄話」と捉えられています。しかし、単に「雑」で「無駄」な話をすればいいというものではありません。他人と力を合わせて行う仕事において、世間話の能力は欠かせないものです。

   私は世間話には、大きく3つのねらいがあると考えています。1つめは、「自分の話を聞いてもらう場を作ること」です。相手に、自分の話を聞きたいと思わせることが必要なのです。その際に目指すべきなのは「信頼感(ラポール)の構築」です。

   2つめは、「本心を聞き出すこと」です。自分や自社の商品・サービス、あるいは他社の商品を含めて日常的な不満でもいいのですが、要望や文句、悩みなどを聞き取るためには、真正面から「何か要望はありませんか?」と尋ねる以外のアプローチが必要となります。

   3つめは「トスアップ」、本題の重要性を認識させることです。営業におけるトスアップとは、有力顧客の社内紹介を指すこともありますが、バレーボールのセッターのように、世間話を通じてトスを上げ、お客さま自身に「本題のテーマ」をアタック(認識)してもらう場合にも使います。

   人との会話の中で脱線してしまうことはありますし、それを全て禁ずるのも愚かです。しかし多忙なビジネスパーソンの世間話は、すべからく上記3つのねらいがどこかに含まれていると考えてよく、受け手の側にも理解する感受性、センスが求められます。

   そして、無事に仕事の本題にバトンタッチされたら、世間話はお役御免となるわけです。

仕事上の評価を下げてしまう「世間話」もある

   この3つのねらいは、自称「世間話が得意な人」に確認してもらいたいことでもあります。

   お客さんと話が盛り上がって「いい感じ」と思ったのに、まるで仕事に結びつかないという経験はありませんか? 「自分は会話が巧みで、ネタに困ったことがない」という人にも、ひとつ注意を呼びかけておきたいと思います。

   会話に酔って自分を見失い「下世話な話ばかりする人」と思われて、知らないうちに仕事上の評価も下がっているかもしれません。ビジネスパーソンの世間話は、あくまでもねらいに沿って戦略的に行うもの。冷静にコントロールすることを心がけて下さい。

   知人で「世間話」が大好きな人がいます。打ち合わせに訪問すると、2時間近く付き合わされることもあります。とにかく博識で、おいしい飲食店情報から映画、旅行、文学と趣味も多彩。マイブームを題材に、訪ねてきた人と世間話をするのです。

「最近の日本映画、まずい方向に向かっていると思わないか?」

   深夜の居酒屋でなく、昼間の応接でお茶一杯のお付き合い。さらに困るのは、仕事との関係性が見えないのです。聞き上手な営業をみつけたらトコトン話を続けます。

   あるときオフィスを訪ねたら、他社の営業に語っている最中でした。聞き手からは「早く解放してくれ」という態度がありあり。発注する側なのでハッキリ断れないのでしょうが、こういう世間話の使い方はいかがなものかと思わされる出来事でした。(高城幸司)

*2012年5月、 日経プレミアシリーズから『仕事の9割は世間話』を出します。ぜひご一読いただければと思います。
高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。
「高城幸司の社長ブログ」
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