経理部係長の「6億円横領&キャバ嬢貢ぎ事件」を分析する

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「低賃金・長時間労働」が不正リスクを高めている?

   この「不正のトライアングル」の考え方は、不正の発生原因を考えるヒントになるだけでなく、不正の防止策を考える参考にもなる。

   従業員に不正をさせないためには、「人には言えない問題」を抱え込ませず、「見つからない」と安易に思わせず、「自己チューな言い訳」をさせないために、会社は何をすべきかに考え実践することがポイントとなる。

   一方、低賃金・長時間労働を余儀なくされ、帰属意識も低くなっている会社では、強いプレッシャーや不満による動機・正当化の温床が常に存在し、機会さえあれば不正は起きやすくなっているリスクが高まっていると考えた方がよいかもしれない。

   この事件の刑事責任はもちろん元係長にある。しかし、彼に長期にわたって口座の管理を任せきりにしていた会社にも、事件を引き起こした重大な責任があるという視点を失ってはならない。

   さらに彼を騙して貢がせ続けたキャバ嬢に対しても、詐欺罪での立件は難しいのだろうが、贈与税を厳しく取り立て、騙し取った億単位のカネはいったいどこに消えたのか徹底的に事情聴取すべきではないか。

   そして、企業経営者や現場マネージャーは、不正に手を染めて人生を台無しにする部下を会社から出さぬよう、この事件を教訓としなければならない。(甘粕潔)

甘粕潔(あまかす・きよし)
1965年生まれ。公認不正検査士(CFE)。地方銀行、リスク管理支援会社勤務を経て現職。企業倫理・不祥事防止に関する研修講師、コンプライアンス態勢強化支援等に従事。企業の社外監査役、コンプライアンス委員、大学院講師等も歴任。『よくわかる金融機関の不祥事件対策』(共著)、『企業不正対策ハンドブック-防止と発見』(共訳)ほか。
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