信頼しても放任するな、「いいニュース」こそ疑え
調査報告書は、「極めて優秀な営業マン」に対して管理が甘くなったと指摘している。何も言わなくても常に実績を上げていたため、上司は「安心して任せて」いた。
売掛金の滞留に疑問をもった部下もいたが、「本人が大丈夫と言うなら問題ない」と思ったとのことである。「何としてもトップの成績をあげたい」というプレッシャーと、任せきりによるチェックの甘さが、架空売上のリスクを格段に高めたといえる。
「Nobody questions good news.」
いいニュースは誰も疑わない――。米国企業で巨額の会計不正と横領に手を染めた者の言葉である。できる部下は、上司(会社)にとってかけがえのない存在だ。期待どおりの成果を報告してくれれば「よくやった。すばらしい!」と手放しで喜びたくなるだろう。
しかし不正を行う者は、その甘さを目ざとく突いてくる。どんな場合も報告を鵜呑みにしてはいけない。
「待てよ。この不況で競合他社が業績低迷に苦しんでいるのに、なぜ彼(彼女)だけがこんなに『できる』んだろう?」
そんな冷静な目で、数字の中身を確認することも必要だ。普段の仕事をチェックするマネージャーにこそ、懐疑心が欠かせない。「信頼しても放任するな」。これが部下管理の鉄則である。(甘粕潔)