「だからぁ、友だちにお金を借りる予定だから、それで返しますって」
(えっ!?)
お客さまの言葉に、私は一瞬耳を疑ってしまいました。遅れている入金をすると申告してきた期日は、1か月も先。その上、入金の根拠が別のところでお金を借りるからというのです、しかも、お友だちから。
どこから突っ込んでいいのかなぁと戸惑うような入金の約束ですが、実はこういうお客さま、最近増えているのです。
それって「自分の収入予定」じゃないでしょう
お客さまに督促の電話をして「○月×日に入金します」と支払い日を申告してもらった場合、私たちはなぜその日にお金が入るのかを確認することになっています。
基本的には給料日だったり年金支給日と答える方が多いのですが、近頃は「友だちにお金を借りるので」というケースによく遭遇します。でも、ちょっと待ってください。それって「自分の収入予定」じゃないですよね!
督促する身として気になるのは、それがはたして本当に入金になるのかということですが、そういうお客様のだいたい4割くらいは「やっぱり借りられなかった」と、再度支払い期日の延長を希望してきます。それはそうですよね、お友だちにも都合があります。
もし自分の友だちが「お金を貸して欲しい」と言ってきたら、どう感じますか? 大事な用途ならムリをしてでも融通してあげたいと思うでしょうが、それがそのまま別の借金の返済に充てられていたと知ったら、あまりいい気分はしないはずです。
でも、そもそもお金を貸してくれるお友だちがいる人は、カードでお金を借りたりしないんじゃないかと思うのですが…。
「友だちと一緒にお金を借りに来るお客さまは、昔っからけっこう多いよ」
ある日、先輩のKさんに件の話をしていると、意外な返答が返ってきました。Kさんは社歴が長く、お店にお金を借りに来るお客さまに接していた経験があります。昔はカード会社も、審査をしてカードを発行する消費者金融の有人店舗のような窓口をたくさん持っていたのです。
お客さまからお友だちへ。廻る廻る、お金は廻る…
「歓楽街の店舗で働いていた時、水商売をやっている女の子がよく2人で来て、連れてきた人の紹介でもう1人が契約して帰っていったりしてね」
「そ、それってただの付き添いなんですか…?」
「心細いのかもしれないけど…。もしかしたら『お金ないなら借りれば? 私も借りてるし』って話かもしれない」
そういえば少し前、消費者金融がしきりに「お友だち紹介キャンペーン」をしていました。お友だちが契約すると、紹介した人に商品券や旅行などがプレゼントされるのです。
まさかお友だちにキャッシングを紹介!? とびっくりしたのですが、お金を借りる人のお友だちには、お金を借りる人が多いのでしょうか。
中には「友だちからお金を借りる」というのとは逆に、こんな申し出をいただくくこともあります。
「友だちに貸していたお金を返してもらうので、○月×日に支払いをしますね」
(今度は借りるじゃなくて、お金を返してもらうかぁ…) カード会社からお客さまへ、お客さまからお友だちへ、お友だちからカード会社へ…。督促をしていると、お金はぐるぐると廻ってるんだなぁ、としみじみと感じてしまいます。
ところがしばらくすると、そのお客さまからこんな電話がかかってきました。
「ごめんN本さん、友だちにお金返すように言ってるんだけど、なかなか返してくれなくて。まだ支払いできないよー」
うんうん、お金を返してくれない相手にはお互いに苦労しますよね。お客さま、督促頑張ってー! って…アレ?(N本=えぬもと)