顧客のライフサイクルを分析、タイミングをねらう
不動産は単価が高く、一般的には一生に何度も買える商材ではない。平均購入回数は1.8回、賃貸は3~4回と限られており、企業が多額のマーケティング費用を投じたからといって、需要が大きく変動するものではないのだ。
「不動産の賃貸や購入は、宣伝広告を通じた企業からのプッシュ型のコミュニケーションではなく、顧客のライフサイクルそのものがトリガーとなる。ここがこの商材のマーケティングの難しさです」(リクルート 住宅カンパニー 企画統括室事業推進部ブランドマネジメントグループの田島由美子氏)
このような特性を踏まえ、SUUMOは不動産の購入・賃貸をまだ検討していない「潜在層」にアプローチしたいという思いがあった。しかし、顧客の方から足を運んでくれない潜在層との接点はない。
そんな中、状況が変わったのが3.11以降。震災をきっかけに、ITに興味関心が強くない人の間でもソーシャルメディアが浸透しはじめた。不動産購入は第一子が小学校に入学するタイミングで検討する人が多いため、未就学児を持つ親に焦点をあて、スーモというキャラクターをフックにこどもを通じて親にアプローチすることを考えた。
同社の調査によると、SUUMOのこども向けコンテンツを体験した人はもちろん、実際に体験していなくてもソーシャルメディア上でそのようなコンテンツの存在を知った人たちの間で、本体の住宅情報サービスの利用意向が高まっていたという。
「将を射んと欲すればまず馬を射よ」という言葉もある。顧客のライフサイクルを分析し、適切なタイミングをねらった施策が、少しずつ成果に現れはじめているようだ。(岡 徳之)