臨床心理士・尾崎健一の視点
「辞める」は単なるグチかも。何が不満か聞き取る
基本的には野崎さんの指摘のとおりですが、あまりにも軽々しく言う場合には「辞める」という発言を言葉通りに取り合わず、単なるグチと捉えるアプローチもあるかと思います。まずは「グチを言うのはいいが、仕事はちゃんとやってくれ。同僚たちへの悪影響も考えろ」と言い渡すことです。そのうえで、面談の際には「あなたは何が不満なのか?」と単刀直入に聞き、グチを言う理由を探ってみてはどうでしょうか。仕事のやり方が分からないのか、それとも評価の仕方が納得できないのか。ハッパをかけるだけでなく、本音を聞き取り改善の手を打てば少しは姿勢が変わるかもしれません。手間は掛かりますが、退職勧奨や解雇の前にはいちどやっておいてもいいと思います。
なお、もしも無気力がうつ病によるものだった場合、それを知らずに退職勧奨や解雇をすると、後になってトラブルになることもあります。以前は元気だったのに元気がなくなったなどの「変化があったか」に注目し、様子がおかしい場合には、念のため医師の診断を受けるよう勧めた方がよいと思います。
(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。